蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- 第03話「要塞港、横須賀」
第3話は、潜水艦イ号401による2年ぶりの横須賀入港の場面から始まります。さわやかな風を受けてとても気持ちの良い光景ですが、良く見ると防護壁の構造や見えている部分の描写に矛盾が・・・ま・良いか〜?!気にしない〜!(笑)
波乱を予感させる海軍側の物々しい警備の中、近代的なドックに落ち着いた401の艦体。超重力砲の整備の為、求めに応じ服をめくってお腹を見せるイオナ・・・とてもお茶目ですが・・・魚雷発射管室はどこに?・・・超重力砲の収納性はやはり謎だ。(笑)
一方、整備と補給をクルーに任せたイオナと群像は海軍の墓地に赴く。着いた途端、逃亡児(笑)「蒔絵(薪絵)」とメイド達に遭遇するが、イオナは一目見ただけで「検索」を掛け「あの子・・・」と何かを言いかける・・・。後になれば複線と分かりますが、関係者以外ほとんど登場しないこのお話の中、何故ヌイグルミ(ヨタロウ)を抱えた子供が?イオナの興味を引いた何か特別なものがあったのか??と奇異に感じたのが初見時の感触でしたね。
続く墓参り・・・慰霊碑に献花する群像を見てその行動を「無意味」といぶかしむイオナ・・・。「残された者達が現実と折り合いをつけるため」「心の平安を得るため」の行為・・・死者を弔う事も含め「無意味な行為に意味を見出そうとするのが人間の進化」と言う群像に、「コピーによる劣化が不可避な増殖システムを活性化し、多様性を維持するための不確定性ノイズに似ている・・・」と受け止めるイオナの思考・・・「ノイズ」ってどう言う意味??2年前にイオナと群像の間で交わされたトンチンカンなやり取りを思い出し興味深い・・・と言うか良く分からない!(笑)とは言え、そんなイオナも、人間にとっての「死」について、何らかのの意味を理解したと言う事は確かか・・・。
『外洋より「霧」来る 勇士 悠然と艦を駆り 身命を挺し
人類の御盾となりて この地横須賀を守らんとするも 「霧」の砲撃 雨礫のごとし
艦 悉く蹂躙さるも 勇気を失わず 今際のときに至るまで 奮戦す
ここに散る 正義に殉じたすべての海軍軍人の英霊に 心より哀悼の誠を捧げ
その魂の安からんことを祈念するとともに 失われた平和を希わんとし
この碑を建つものである』
慰霊碑の碑文がキチンと読める上、墓地の外観は沖縄の「平和の礎(いしじ)」を思わせます。戦記物ではあるけれど、基本的には平和志向であることの表明でしょう・・・。
そしてお話は、陸軍による「夕食会」への手荒な「ご招待」を経て後半へ・・・。
C'est un restaurant sur une colline (これは丘の上のレストランです)という妙な名前のレストラン・・・ロビーに流れているBGMはモーツァルト・・・意外と趣味が良い!(笑)
遥かに防護壁を見渡すテラス席での会食の相手は、次期首相と噂される議員にして政界の実力者。その実力者は「霧」の艦やメンタルモデルであるイオナを信頼できないとして「401を政府に返還してはもらえまえかね・・・?」と要求する。対する群像は「信頼に値しないのは、大海戦の敗北から7年、何も成しえなかったあなた方のほうではありませんか?正規の軍人の訓練も経験も「霧」相手には全く通じない。それがあなたにはまだ分からないのですか?そして・・・イオナの事を化け物呼ばわりするあなたの事を・・・信用できない!」と、言い放つが・・・しびれを切らした議員は兵を展開させて実力行使に出る・・・。
場面は変わって殺風景な「テラス」でのコンゴウとマヤとの会話・・・マヤの語る「オシャレ」の概念が理解できない(笑)コンゴウが言う・・・。
「かつて我々は圧倒的な力で人類を追い詰めた。しかし、それは我々が、何物をも貫き通す矛と、何物をも通さない盾を持っていたからに過ぎない。人類の技術が同等だったら、戦術という概念を持たない霧は敗れていただろう。では、霧が戦術を持つためにはどうしたら良い?答えがこれ(メンタルモデルという形)だ・・・。 肉体がもたらす限界が思考を生み、思考は自我を形成する・・・。 自我の獲得と同時に、我々は時の概念を得て、未来を 予測することを知った・・・戦術の誕生だ・・・。しかし、もうこれ以上人間から学ぶことは何もない、401の観察は不要だ、むしろ有害と言っても良い・・・」
「有害」・・・タカオの例を挙げるマヤに「そうだな」と冷たく言い放つコンゴウ・・・虚ろな表情が・・・怖い・・・。(汗)
その頃、当のタカオは・・・函館の書店「SIMIZU」で「艦長」本(ぼくらのもの知りシリーズ5? いまい ゆうぞう監修 「船と艦長」)を入手してウットリ・・・(爆)探りに来た400、402の姉妹艦に見とがめられても臆せず「私は欲しいの・・・艦長が!」「私は強くなりたいの!兵器なら当然のことでしょ!」と言い放って去る。「潜水艦隊は諜報が主任務」と言う姉妹(では401は特別なのか??と気になるが・・・スペック表には攻撃型潜水艦とあるね・・・)はタカオの変貌を認識して言う。
「霧が変わろうとしている・・・。引き続き監視が必要ね・・・あの子を使って・・・。」あの子か・・・「あの子」の言動も要注意だった・・・でも本当に・・・そんな役目でのあの言動なのか???と気になるね・・・。
そして横須賀では、大戦艦「ハルナ」と「キリシマ」による防護壁に対する砲撃音が轟いて401クルー達の戦闘準備が始まり、管制を乗っ取ってドックを離脱した401が第1話同様に姿を現す・・・。
なすすべの無い議員が「君はいったい何をするつもりだ?」と、問いかけると、「世界の未来は分からない・・・しかし、そこに自分の未来もあることは承知しています。未来を切り開く力があるのだとすれば俺はそれを使って、その最果てを見てみたい・・・(死も)それが、自分で選んだ結果であるなら 本望ですよ・・・・」と群像が答え、イオナも「私は兵器・・・群像の命令に従うだけ・・・。でも、今日一つ分かった・・・私は・・・群像を死なせないために 存在している・・・」と答え・・・それを聞いた議員は考え込み・・・新たな敵を迎え撃つべく401は進む・・・。
第3話・・・群像やイオナの「宣言」、そこから見える全話通しての「世界観」が明示されています。その上で、強大な敵に臆することなく立ち向かう群像達が実に格好良いのですね!第1話で「停滞した今を打破する力が欲しい・・・」と言った群像が手に入れた「力」・・・イオナと共に、行動によってのみ開かれる未来に賭ける・・・そんな 群像の決意と、その意を理解し支えようとするイオナの意識が静かに語られます・・・。
細かいことを言うと、大海戦の敗北から7年って・・・9年の間違いじゃないのか???とか、401の登場場面からしてどう見ても「丘の上」じゃないから・・・C'est un restaurant de bord de mer の方が良いんじゃないの???とかありますが、全体として良くまとまっている上考えさせる場面も多くて見応えのある第3話です!