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村山早紀
徳間書店
¥ 679
(2012-12-07)
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村山 早紀
徳間書店
¥ 648
(2014-09-05)
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ここのところ続いていた仕事(書類を見て粗さがし!)が一段落・・・久しぶりに読書などしてみました・・・。
読んだのは村山早紀の「花崎家」シリーズです。現在、徳間文庫から二巻まで出ていて、第一巻は2012年12月刊、第二巻は今年の9月刊です。字が小さな文庫本は敬遠しがちなのですが、最近ツイッター上で良く見かけるので読んでみました。
娘達が小さな頃からこの人の本はよく読んできているのですが、同じように読んできた他の作家さんの作品を読む機会がここ数年ほとんど無くなっている中で、少ないながらいまだに読み続けていられるという貴重な・・・ありがたい存在ですね。
徳間文庫の書き下ろしなのに、今までの作品でお馴染みの「風早の街」が舞台。新しい登場人物による新しい物語で、特に児童書とも謳っていないので普通のエンタメ小説になるのかも知れませんが、読んでみると分かるようにロマンチック・ファンタジー小説と言う奮雰囲気が濃厚です。次の文は第一巻の紹介ですが、一部を除いて二巻とも通用する内容です。
『風早の街で戦前から続く老舗の花屋「千草苑」。経営者一族の花咲家は、先祖代々植物と会話ができる魔法のような力を持っている。併設されたカフェで働く美
人の長姉、茉莉亜。能力の存在は認めるも現実主義な次姉、りら子。魔法は使えないけれども読書好きで夢見がちな末弟、桂。三人はそれぞれに悩みつつも周囲
の優しさに包まれ成長していく』
〜amazon
さてまずは第一巻(全四章、第二巻は全七章)を読んでみると・・・正直に言いますが、最初はかなり戸惑いました。
村山さんの作品の特徴としては、優しく丁寧な筆致でつづっていきながら、読み進むうちに予想外とも思えるファンタジックな展開で引きこまれる・・・というところなのですが、この本・・・第一章を読み始めた途端に、何だか変?出来が悪い???と感じてしまいました。(汗)
風早の町に『
超高層のビル』?『この家の人々は
魔法を使うと、先祖は
神仙や
あやかしの血を引くものやも知れぬと、
恐れられ、
敬われていた』って・・・どうも大げさと言うかチグハグ・・・。『館を猛火から守ろうとしたという薔薇たち
に金木犀は、』って・・・「に」で良いの???・・・とか、風邪で「急死」と言いながらあらかじめ死期を悟ったような母親の言葉って・・・とか、漢字とひらがなの使い分け、句読点の使い方等も含めて微妙〜な部分の書き方や、ちょっと「唐突な話の展開」に首をひねるような部分が目に付きます・・・。
どうしたんだろう・・・と思いながらも、ファンですから読み進みます!(笑)
第2章・・・最初はちょっと大雑把と感じる部分がありますが、後半から調子が良くなって・・以後は最後まで一気読み!4章それぞれに花咲家の人々が関わってお話が広がって行き最後には感動的な大団円を迎えという展開に・・・。
安心しました・・・(笑)
読了して全体を振り返ると・・・。
幼くして母親を失った少年の切ない思い、そんな弟に表面上はきつく当たりながらも、実は同じように感
じている自分を素直に表せない姉二人・・・子供たちを優しく見守る父親と秘めた過去を持つ祖父・・・。花の言葉が分かると言う不思議な一族、それぞれ
の思いが、「クリスマスの奇跡」に向かって重なり合っていく様が、個性的な風早の街の住民との係わりも含めて感動的に描かれている・・・という充実した展開です。
ここで、第1章の違和感は何故??と思って考えてみると、どうも登場人物のキャラクターも関係しているのかな?結構乱暴な次女、長女との辛辣な会話もあって今までとは雰囲気が違います。それに対して後半のメインとなる登場人物は一族の最年少、小5の男の子でとても繊細な性格。そのエピソードを丁寧に描写しているので読んでいてもホロリとさせられます。自分の子供の頃を思い出した部分もありそうですが、以外と・・・仕事で使った「粗さがし目線」が残っていたのかもしれないな・・・?(汗)
念のため第1章は2回読んでみました。すると・・・するすると読めて「乱暴な展開」もあまり気になりません・・・これは・・・やっぱり仕事のせいかな・・・?(笑)今までの作品の延長戦上の雰囲気を期待して読むと面食らう、ということのようにも思えます。
ま、新しい「一般向け小説」と言う事で、大人目線の書き方を「試した」と言う事もあるかも知れませんし、出版社の意向や作家の考えと言う事もあるでしょうからとやかく言う事はできませんが、後半の盛り上がりはやはり村山ワールド全開で流石です!結果として村山早紀らしい作品となっています。
これはやはり・・・心温まる癒し系ファンタジー小説ですね!
続けて第二巻も読んでみましたが、こちらはプロローグとエピローグ+五章=全七章の構成です。第一巻で紹介された一族それぞれの、第一巻から『一年後の夏の物語』・・・。
『勤め先の植物園がお休みの朝、花咲家のお父さん草太郎は自らの少年時代を思い起こしていました。自分の耳には植物の声が聞こえる。その「秘密」を抱え周囲
の「普通」の友人たちとは距離をおいてきた日々。なのにその不思議な転校生には心を開いた…。月夜に少女の姿の死神を見た次女のりら子、日本狼を夢見、探
そうとする末っ子の桂、見事な琉球朝顔を咲かせる家を訪う祖父木太郎。家族それぞれの休日が永遠に心に芽吹く、シリーズ第二弾!! 』
〜amazon
不思議な転校生、月夜の死神、未来からの使者、子猫の恩返し、大切な思いを忘れない朝顔・・・第一巻の様な結末に向かって収斂していく展開ではないのですが、さまざまな出会いを通して描かれるお話の数々はひたすら優しく暖かい・・・。第1巻に比べるとちょっと「小ぶり」なお話が多いですが、この作者ならではの作品ばかりであり充実したひと時が過ごせました。
初めてこの作家の作品に触れる人、「普通の小説」を期待する人にとっては、次々に繰り広げられる「イリュージョン」の数々に思わず目が白黒かも知れませんし、正直勿体ない!とも思えるのですが、それこそこの作者の真骨頂と言えますね!