2012.05.27 Sunday
乾石 智子 「夜の写本師」
『右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。だが、育ての親エイリャが殺されるのを目の当たりにしたことで、彼 の運命は一変する。女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジスト。月の巫女、闇の魔女、海の娘、アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千 年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。エイリャの仇をうつべく、カリュドウは魔法とは異なった奇妙な力をあやつる“夜の写本師”としての修業をつむ が…。 』
(〜amazon)
山形出身の新人作家の長編デビュー作・・・らしいが、会社つとめの娘さんがいると言うから若い方では無さそう・・・。
ストーリーを一言で言えば「時を超えた復讐の物語」とでもいうのかな?1000年前の惨劇・・・死に際に復讐の呪いをかけ、何度も生まれ変わった「女」が憎き魔道師を追い詰めていき、遂には・・・というお話だ。
表紙も含めて装幀も雰囲気出ています。おどろおどろしくも何処か乾燥した空気感が漂い、中東から地中海にかけての海の香りも・・・。(嗅いだことないけど・・・笑。)
いわゆる魔術師でなく「魔道師」という表現、そして初めて聞く「写本師」という職業も興味深い。そして随所で見せる「暗く」て「痛い」表現や、アラベスクのような緻密で重層的な物語をまとめ上げる手腕は新人離れしている??
やはり・・・若い新人では無さそう・・・。(笑)
魔術を使うものは魔術師を恐れて防壁を築き上げるが、魔術を使える写本師・・・「夜の写本師」という存在がその盲点を突く・・・。斬新なトリックにも驚かされるが、意外な程晴明な結末が心地よい読後感を与えてくれます・・・。暗いばかりの「死」の物語が、最後の最後で「生」の物語に転ずる所は見事です!!
生まれ変りの体験を描く場面など過去と現在が交錯する事もあって登場人物も多く、記憶力が落ちている私にはちょっと辛かったのも正直なところですが、しっかりとした構成もあって何とか読了できました。時間があったら二度読みたいところですね。
今までにない魔術の匂い・・・お望みならば・・・どうぞ・・・。