2010.04.26 Monday
三田 誠広「青い目の王子」
『古代インドを舞台にしたブッダ誕生の物語!ガンジス流域の大国に誕生した「青い目」の王子、ニラナーヤナ。その美しい瞳がもたらす「愛」と「悲しみ」の運 命も大いなる神秘の力で乗り越えていきます』
(〜amazon)
確かに、簡単に言えば『古代インドを舞台にしたブッダ誕生の物語』なのですが、輪廻転生を経て後の世に「ブッダ」(釈迦)になる人物の若き日の姿ということなので、お話を理解するのがちょっと難しい面もあります。
描かれるのは、主人公の王子ニラナーヤナの、修行者によって祝福された誕生から青年期までのエピソードです。偉大なる支配者であった父親との間の軋轢や、母親の不幸な後半生とそれ故の主人公ニラナーヤが背負うことになる過酷な運命、継母との間の愛憎劇など、子供向けはとても思えないストーリーが展開されていきます。
児童書らしく、王子の心優しい人間性や「力」なども含めて挿絵同様の柔らかな表現で描かれているのですが、両親と継母の行動に見られる、悪いと分かっていても「そうせずにはいられない」という切羽詰まった激情の発露などのような人間の弱さと、その激情を静かに受け止め、あえて苦難の道を選ぶ王子の姿の対比は「昼メロ+ビルマの竪琴」という雰囲気でしょうか?(笑)
また、控え目に描かれる王子の母親に対する「思い」や、母親の残した「歌」の解釈の仕方など、大変微妙な部分もありジックリと読む事が大事か・・・。
そんな内容を子供達が理解して楽しむかと言えばちょっと疑問ですが、優しさに満たされた静かな結末の光景の中に、人を思うことの「機微」を感じ取ってくれれば良いのかも知れません。
う〜ん・・・はっきり言って・・・・「大人向けの児童書」ですね!(笑)