雪太郎のつぶやき

美しいもの、面白いもの、切ないもの、考えさせる物・・・。一人が好きだけど、独りじゃ寂しい。そんな私のつぶやき・・・・。
クラシック音楽が苦手な人にはお薦めできません。暗いのが嫌いな人にはお薦めできません!!お子様にもお薦めできません!!
[謝辞]
父と母に、家族に、多くの慰めと喜びを与えてくれた、過去、現在、そして未来の芸術家達に、感謝!!
[おことわり]
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2008.07.30 Wednesday

さらばシュタイン!

朝刊を開く、何気なく見た社会面の記事・・・。

『NHK交響楽団に29日入った連絡によると、ドイツの指揮者で同楽団名誉指揮者のホルスト・シュタイン氏が、27日、スイスの自宅で死去した。80歳だった』
(〜読売新聞)

80歳か・・・いい歳だよね・・・。

まるでオデコに顔がついてるような独特な風貌、木訥とした人柄を想像させるそれは一目見たときから強く印象に残りました。実際の人柄はどうだったんでしょうか?あいにくそこまでは知りません。何故か?ホルスト・シュタイン=石頭というイメージが強く残っているのが不思議です。(笑)

シュタインが私の印象に残ったのは1981年と84年のバイロイ音楽祭の指揮でしょうか?その他N響などを指揮した演奏をFM放送などで聴いていたはずですが・・・。

実は、顔と名前が一緒になったのが1980年10月25日(土)?

ウィーン国立歌劇場の初来日公演が行われたその日、カール・ベームの代役として「アリアドネ」のタクトをとったのが確かベリスラフ・クロブチャ-ル・・・だったと思う。期待していたベームでなくてど〜でも良かったので記憶がありません。シュタインの名前と顔はパンフレットに載っていた写真の印象が強かった・・のかな?(笑)

彼の音楽家としての存在は1981年と84年のバイロイ音楽祭の指揮で強く印象付けられました。81年の「パルシファル」、84年の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。どちらも歴史に残る名演です!!それまで、長いだけで退屈としか思えなかったこれらの曲ですが、その魅力に開眼させてくれたのがシュタインの指揮で聴いた演奏ですね。神秘体験としか言いようがない深淵なる「パルジファル」、純真なるドイツ魂を美しく歌い上げた「マイスタージンガー」・・・。ワーグナーと言う作曲家の作った「音宇宙」を体験させられた・・・そんな風に感じた凄い演奏でした・・・。ディスコグラフィーによると、これらの演奏のライブDVDもあるようですので一聴をお勧めしましょう。

その後、主にN響を指揮した演奏を聴いてきたのかな?特別な名演・・・という印象も無いのだけれど、安心して聴いていられる人でしたね・・・。

1996年以降病気がちとなり、1999年以降は指揮活動を休止されていたとのこと・・・久々に聞いた名前が・・・訃報だったとは・・・残念です。

しかし・・・80歳か・・・いい歳だ・・・お疲れ様と申し上げましょう・・・。

そうだ、久しぶりに聴いてみよう・・・パルシファルを、マイスタージンガーを・・・。

心より、ご冥福をお祈りいたします・・・・。ムード

2008.07.29 Tuesday

横山 充男「幻狼神異記 3」

幻狼神異記 3 (3) (teens’ best selections 15)
幻狼神異記 3 (3) (teens’ best selections 15)
横山 充男 (2008年7月刊)

最新刊にして、3部作の完結編です。
スカイエマ氏による表紙のイラスト、第3巻は満月を背にした赤い瞳の主人公「宗方健」。いよいよ迫力満点!!この表紙、よく見ると「幻狼」という字の斜めの線が、シルバーの箔押しになってます。狼の爪痕のようですが、第1巻では1本、第2巻では2本、そして第3巻では当然3本に・・・。「健」のオオカミパワーが強大になるに従って、爪痕の本数も増えるんですね・・・凝ってます〜。(笑)(amazonの画像だと黒く見えますが・・・(汗))

さて内容ですが、第2巻で、学校の先輩である敷島一輝の思惑にのって鈴鹿の山中に出かけた健は、その地で出会った祖父の口から自分の素性を知り、さらには現れた狼霊と誓約を交わす事となった。またその過程で、敷島一族の「野望」と、その「野望」のために式神を使って人々を操ってきた事実を知った・・・。

第3巻での健は、ついに敷島一族との全面対決に突入する!!

自らの野望のために人々を操り、邪魔な存在は排除すると言う敷島一族。自衛隊内部の過去の秘密と利権がらみの現在の秘密。それらに接近を試みるジャーナリスト、そして健の友人の父にして有能なる自衛官・・・宗教団体を装った敷島一族の前に消えていく命・・・。その事実を知った健の怒り・・・。

満月の夜。更なる犠牲を、大いなる野望のための生け贄を求める一族の牙城に、健は仲間たちとともに突入する・・・。

語られるのは、天の「権威」によって民を意のままにしようとする輩、その「権威」に何の疑問も持たず跪く輩、そして無残にもその「権威」の犠牲となる人々の姿・・・。そして、それらに対して、自らの足で立ち、自然と交歓し、内なる声に耳を澄ませることによって自らの守護霊と巡り会う道を進めと諭す健と仲間たち・・・。

激しい戦いの中で、「敵」であるはずの者に対しても「あんたたちは犬じゃない!」と叫ぶ健・・・。絶体絶命となった最後の瞬間、囚われとなり絶望の淵に沈む少女に「青鷺よ、一緒に飛べ!」と叫ぶ健・・・。

満月の下の決戦の場に、狼霊と一体となった健の咆哮がとどろく・・・・。


第1巻の、弱々しい健の姿はどこにもありません・・・精神的にも肉体的にも大きく成長した男の子が描かれています。

今までの多くの作品でも、自然と一体となった日本古来の精神的な支柱について書いてきた横山氏ですが、中学生が主人公であるこのシリーズでも予想外にハードな雰囲気でその「支柱」を描いています。ちょっと大げさに言えばスピリチュアル・バイオレンス・アクション小説ですね。(笑)また今回は「ナンバ歩き」「ナンバ走り」などの古武術も取り上げられていて、肉体的な感覚の面で随分と踏み込んだ表現がされています。自分でもやってみたくなるような描写があって中々奥が深いです!逆に、女性にはちょっと辛いかもしれませんが・・・。

3巻で完結と聞いたような気がしますが、これで終わりは・・・ちょっともったいないな。もう少し成長した健の物語でも良いと思いますし、この路線の先にある精神的な強さを追求するお話が読みたいですね。読書

2008.07.28 Monday

のたうつ二十歳 五嶋龍

昨日の夜新聞のTV欄を見ていたところ「五嶋龍」という文字が目に止まりました。TBSの「情熱大陸」をという番組です。有名な五嶋みどりの弟がヴァイオリニストとは聞いていましたが、一度も演奏に接したことがないのでどれほどの人物かと興味が湧き、眠いのを我慢して見てみました・・・。

7歳でデビューして13年のキャリアがあるそうです・・・。見るからに凄いやつが出てくるかと思ったら、う〜ん・・・二十歳の若造です〜〜。(笑)

何曲かコンサートでの演奏も聴けましたが、どうという感想も浮かばない曲です。(笑)パガニーニだったか?リストだったか?の・・・何とか?と言う曲(笑)ま、演奏に関しては別の機会を待ちましょう。

興味深かったのは、彼の人間的な面ですね。記憶に残っていることを書いていくと・・・。(当然、内容は大まかな「こんな感じのことを言っていた・・・ような気がする」というレベルです・・。(笑))

自分の事を「常に注目されていたい人間・・・」と言い、日本という国を「自分のことを自分で守れない情けない国・・・」と言い、「勉学に対するモチベーションが下がった」と言ってハーバード(合格したときは姉と抱き合って喜んだそうだ。理論物理学をやりたいらしい。)を1年休学し、タイの田舎の小学校?で(学校を沢山作る援助プログラムに参加して?)子供たちを前に演奏を聴かせながら「今思いついた、この国に空手を持ってこよう・・・」と言い出す・・・。(N・Yの道場で黒帯2段?)「ずっと音楽家でいくなんて思っていない」と言い、他のヴァイオリニストの演奏を酷評し(姉は横で静かに聞いている・・・(笑))、マネージャーでもある母親に音楽の解釈で逆らいながらも、最後は言うことを聞く。(母親が最高の師と言っていた?)ステージに向かう直前なのに携帯を無くしたとイラツキ・・・。黒木瞳、大竹しのぶを好きだと言い、小雪を思って身悶えする・・。(笑)

う〜ん・・・二十歳の小僧だ・・・。(爆)

ハーバードに通い、世界中で演奏会を行い、広いマンション?に住み、何不自由無く生きているように見える彼、幸せなのかな???ひょっとして・・・以外と孤独??・・・ちょっと心配。(笑)

二十歳の彼にとって、未来は全くの未知数であり、過去は何の意味も無いように見える。「音楽家」として生きていくと「覚悟」を決めるに至っていない彼は、今大いに迷い、のたうち回っているように見える。

ざま〜見ろである!!(笑)

迷いに迷い・・・右往左往し、泣き笑いを繰り返し・・・大きくなれば良いのだ・・・。

ちょっと路線が変わって、物理学のエレガントな論文を書いてくれても良いけれど、多分私には猫に小判だ・・・。(笑)

やはり、いつかきっと素晴らしい音楽を聴かせてくれる事を祈ろう・・・。赤ちゃん

2008.07.27 Sunday

雨上がりの空



夕立が去った後の南の空を見たら虹が出てました。しばらくするうちに消えていきましたが、夕日に染まった西の空を見ると不思議な雲が・・・。まるで白い小鳥と、それを追うガメラみたい。(笑)あめ

2008.07.27 Sunday

ビアトリーチェ・ソリナス・ ドンギ「ジュリエッタ荘の幽霊」

ジュリエッタ荘の幽霊 (文学の森)
ジュリエッタ荘の幽霊 (文学の森)
ビアトリーチェ・ソリナス・ ドンギ作 エマヌエーラ・ ブッソラーティ絵 長野徹訳
(2005年7月刊)

時節柄こんな本も良いかな・・・ちょっと黄ばんだような色調の表紙からはかなり古い印象を受けますが、比較的新しい本。表紙と裏表紙の絵のみがブッソラーティ氏の作品のようで、同じ絵が中身のページにも掲載されています。柔らかなのに簡潔な線で書かれた絵はお話の内容をそのまま描いています。

「第二次世界大戦末期、母親と八歳の弟フレードと一緒に母親の故郷の村に疎開していたリッリ。父はドイツ軍の捕虜となり、ポーランドの収容所にいる。村の大通りには、ときおりドイツ兵やファシストたちのトラックが走り、山の中にはパルチザンたちがひそんでいた。そんな夏のある日、リッリは「呪われた屋敷」と呼ばれる家に見知らぬ少女を見かけた。村人の話では、結核で亡くなった少女の幽霊が現れるという…。戦時下のイタリアの田舎を舞台に、少女たちの秘密と友情、そして成長を描くビトリット賞、ルニジャーナ・ラガッツィ賞受賞作」
(〜amazon)

第2次世界大戦は多くの悲劇を生みましたが、文学の世界でもあの戦争の実相を語り伝えるための多くの作品が世に出されました。アニカ・トールの作品もそうでしたが、この作品もユダヤ人の悲劇が描かれています。大人になった少女が過去を回想する形で綴られた、多くの悲劇に取材した児童向けの「小説」のようです。

後書きにはあの頃のイタリアの政治状況などの説明もあります。イタリアは枢軸国としてドイツと手を握りましたが、対戦末期にはファシスト政権は崩壊し、イタリア国内はドイツ占領軍と連合国軍との間の戦闘にさらされるようになった。この物語は終戦の1年ほど前の夏の場面から始まります。

とは言ってもお話の大部分は、戦時下とはいえ食料に不自由を感じる程度の子供たちの日常が描かれています。暑い夏の日、川で水浴びをする子供たち、親戚や村人たちとの素朴な交流の様子。荒々しくもなにやら頼もしい叔父さんとかわいい飼い犬の姿。時折存在を感じさせる程度で、ほとんど目立たないファシストやパルチザンたち・・・あの頃のイタリアの、田舎の村の光景です。

そんな中で、主人公のリッリが村外れの家で偶然見た少女の姿。(表紙の絵に描かれているのがこの少女です。)村人の迷信もあって幽霊かとも思われた少女だったが、しばらくしてその家に住む女性から、勉強を見るから毎日きて欲しいと言う不可解な申し出がリッリの母親に・・・。その申し出を受けて通っていくうち、リッリは不思議な事に気づく・・・。

そして、次第に明らかになるのは・・・過酷な戦争の悲劇・・・。結末ではファシストの急襲の中の行き詰まる逃避行が描かれます・・・。

ユダヤ人の悲劇はナチスが勢力を及ぼしたヨーロッパ全体で起こったようですが、イタリアでも・・・とは正直言って思いもしませんでした。それだけにちょっとショックではありましたが、冷静に考えれば当然のことで、このようなお話はヨーロッパ全土で無数にあったのでしょう、こちらの認識不足でした。その事実を知ることができたのも収穫ですね。

物語はイタリアの明るい太陽のもとで繰り広げられ、大部分は屈託のない子供たちの様子が綴られるだけに、結末の異様な緊迫感は「事実」だけが持つ「恐ろしさ」を思い起こさせます。とは言ってもさほど過酷な描写はありませんので、平和が続く今の日本で子供たちが読み、平和のありがたさを思い起こすのにはふさわしい本ではないかと思います。読書

2008.07.26 Saturday

大砲

今日の読売新聞一面に、大砲に手を添えてご満悦・・・と言う雰囲気のおじさんの写真が載ってました。「日本の知力」という連載コラムで、世界に誇る日本の知力を紹介する、という内容だったのですが、先日見たNHKの番組でも同じような人が出ていたのを思い出して笑ってしまいました。

今日の写真のおじさんは食玩で有名な「海洋堂」の社長宮脇氏で、プラモデルコレクターでもあり、「勝手にやり続けたいから」と会社を大きくすることを拒み、「造形集団」であり続けることを選ぶ変人でもあるようです。(笑)

同じ記事の中で紹介されていたのは「タミヤ」社長の田宮氏。冷戦まっただ中の1960年代に戦車のデータが欲しいとソ連大使館に直訴したり、中東戦争当時にイスラエルに飛び、捕獲されたソ連製戦車の写真を撮りまくったという変人だそうです。ポルシェ911の実車を買って分解したりし、ポルシェ本社に通い詰めて首脳陣を圧倒し、ついには新車の図面を送られるほどになった・・・何とかもここまで来ると只者ではない・・・。(笑)

NHKのTVで見たのは、愛知県三河地方の一角にある従業員6人の小さなプラモデル製造会社「ファインモールド」。宮崎駿監督やジョージ・ルーカス監督が認めたという、小さいながら世界的にも有名な会社らしい。番組に登場した社長の鈴木氏は、宮脇氏と同じように大砲を買い込んで大喜びしてましたね。(笑)旧日本軍の兵器を主に紹介してましたが、他社が手がけない隙間商品のような作品を展開し、細部まで手を抜かない造りに高い評価を受けていると言う話です。リアリティーを追求するため、旧軍の元兵士から話を聞いたり、貴重な資料を大量に収集したり、細さ0.2ミリ?の部品を作るために最新のレーザー加工機を導入したり・・・。その結果は、その兵器の長所だけでなく短所も含めて再現し、戦争の悲惨さにも気づいてほしいと言う願いも込められている・・・。

私も、子供の頃は小遣いを貯めて買いましたよプラモデル。やはりタミヤが多かったかな?お世話になった会社ですね。(笑)今でも覚えているのは12分の1スケールの本田F−1です。細部まで再現されたディテールにうっとりさせられあの頃・・・若かったな・・・。(笑)

「普通の人」にとってはどう見ても「変人」ですが、一途な生き方はうらやましくもある3人の社長でした。無くても誰も困らない商品に情熱を傾ける姿は男の子そのもので、子供の心を持ったまま生きていける希有な人々、幸福な人たちだとつくづく思いました。久しぶりに何か作りたくなったね。赤ちゃん

2008.07.26 Saturday

よしもと ばなな「ハゴロモ」

ハゴロモ
ハゴロモ
よしもと ばなな (2003年1月刊)

バナナは好きである。やはり果物の王様ですね。でも最近は、その魅力が分からないお子様も珍しくないそうですが・・・。

よしもとばななの作品は「アルゼンチンばばあ」とかいうのを読んだ記憶がありますが、それ以外は特に印象のない人。今回はなぜか図書館のYAコーナーにあったので借りてみました。あとがきを見たら「本当に久しぶりに書いた、全くの、青春どまんなか!の作品です」とあった。そうかど真ん中か・・・と納得して。(笑)

冒頭は辛いな・・・。

主人公が生まれ育った町を流れる川の話。そして、18歳から8年間続いた「愛人生活」に終止符を打って田舎の町に帰ってきた主人公の辛い独白が続く・・・。捨てられた女の悲しい思いが・・・延々と・・・。

これは困った・・・正直そう思ったが私は耐えた!!凄いぞ自分!!である。(笑)
(凄いぞ自分・・この間も言ってたな・・・。(笑))

題名は「ハゴロモ」。意味不明だな〜と思っていましたが、読んでいくうちに分かります。傷ついた心を、人を、優しく包みこむハゴロモのような雰囲気、ということですね。

そうです、この物語は、癒しの物語なんですね。

身も心も疲れ切ったまま、川の流れる町に帰ってきた主人公「ほたる」。生きる意欲も失ったほたるが祖母の元に身を寄せて暮らし始め、出会った人々と交流を重ねるうちに体験する癒しの日々が描かれます。さりげない言葉の中で相手を優しく受け止め、見守っていることを伝える会話を積み重ね、少しずつ生きる力を取り戻していくほたる・・・。

さらには、過去からよみがえる夢のような記憶と、その記憶に関わる人々との出会い、そして神秘的な体験を経て判明する奇跡の物語も語られます。その中で、主人公ほたる自身も癒され、そして癒すことになる・・・。

不思議な人物も多数登場しますが、それぞれの人が特別な人と言うより、物事の本質を静かに見つめる感性豊かな人々と言う感じで描かれています。あなたにも私にも、そんな部分があるんじゃないか?と思わせるように・・・。ちょっと神がかった部分もさえも・・・。(笑)

これは・・・大人のファンタジーですね。

さすがに純文学の作家?らしく私には難しい表現がたくさん出てきます。普通の人がこんなこと言うかな?と感じる場面も度々。結局、2回読んでしまいました。1回目は後半で引き込まれて泣けました。2回目は前半をじっくり読んで何とか全体が理解できました。難しい言葉もじっくり読めば味わい深いと分かります。ひょっとしたら何度でも読める本かもしれません。

結局のところ、この物語は、町に流れる川と、その川によって生み出されるハゴロモによって癒される人々の物語と言えるようですね。川に癒され、川に流され、川に護られて生きていく普通の人々の、幸福な人生の物語と言う感じだね。

辛くても、焦らずゆっくり生きていこう。やがて癒され、蘇る時が必ず訪れるから・・・そんなメッセージを感じます。読書

2008.07.24 Thursday

サウンドトラックから見る! アニメ「BLUE DROP」の世界 その5

アニメ「BLUE DROP」では37曲ほどにも及ぶBGMが使用されましたが、この「サウンドトラックから見る!」で取り上げるのは極一部になります。静かで叙情的な曲ばかりで、アルメの側の場面で流れた曲や戦闘場面の曲はちょっと・・・辛いな・・・ご了承下さい。(笑)という事で、今回は第8曲です。

 8、 Nostalgia(郷愁)作曲 Clara 2:42
第1話、寮を逃げ出したマリが池の端に座り込み、心配したミッチーが話しかける場面の曲。「千光寺萩乃さん。頭がとっても良くって、勉強もスポーツも凄く出来て、優しくて・・・」「若竹さんも・・・千光寺さんの事、きっと・・・きっと・・・好きになると思います!」真直ぐにマリを見つめるミッチー・・・。

第1話にしてNostalgiaという曲名・・・ミッチーのかけがえのない思い出・・・線の細いヴァイオリンの旋律・・・優しく切ない調べ・・・・・・。

第3話、第4話、第8話、第11話、第12話でも。12話のプールの場面、萩乃の切ない涙と最後の笑顔・・・そして・・「大好き!」・・・心に沁みます・・・。



これも良く流れていました。しかも長いんです!複数の場面に亘っていること多くてまとめるのが大変・・・。(笑)

まずは第1話。
萩乃との出会いで衝撃を受け寮を飛び出したマリ・・・。池の端に座るマリを見つけてほっとするミッチー。
「ここにいたんですね。良かった・・・」
「本当に広い学校ですよね」学校の敷地を見渡してマリに話しかけるミッチー。
「寮だけで12も在って、色んなことが信じられないくらい高価で、生徒の皆さんは本当のお嬢様ばっかり・・・。さすが名門校って感じですよね」
池の端から道に戻るミッチー。あわてて後を追うマリ。道にたたずみ、夕日に浮かぶ町、海と島を見つめながら語り続けるミッチー。
「私、この町で生まれたんです。ダメ元で試験受けたら受かっちゃって・・・。うち、普通に商売やってるだけだから、無理しなくて良いって言ったんですけど・・・お父さん、海鳳だったら家売ってでも入れさせるって、張り切っちゃって・・・。でも・・・ここには他にそんな人いなくて・・・どうしても私・・・気後れしちゃうって言うか・・・」うつむいて、つらそうな表情のミッチー・・・。
そんな様子を見て小さく笑い「・・・良いお父さんじゃない・・・」と語りかけるマリ。
驚いてマリを見つめ「はいっ!!」と明るく応えるミッチー・・・。

夕日を浴びて歩く二人・・・。

「でも、ここの皆さんも良い方ばかりなんですよ。お部屋にあったお花も、新しく来られる方のためだって・・・千光寺さんが」「千光寺ってさっきの?」「ええ。千光寺萩乃さん。頭がとっても良くって、勉強もスポーツも凄くできて、優しくて・・・」
「ふ〜ん・・・そうなんだ・・・」険しい表情のマリ・・・。
「あの、若竹さん・・・?お二人に・・・何があったのかは分からないんですけど・・・きっと・・・何かの誤解だと思うんです。だから、それが解ければ若竹さんも・・・千光寺さんのこと、きっと・・・きっと、好きになると思います・・・」夕日を背にミッチーの顔を見つめるマリ。両手を握りしめ、夢中で語るミッチー・・・。

参ったな・・・」うつむいてため息をつき・・・つぶやくマリ。

「あ・・・あっ!私、勝手なことばかり言ってごめんなさい!」我に返って、あわてて頭を下げて謝るミッチー。

「ううん・・・」うつむいたまま小さく首を振ってから、気を取り直して顔を上げ、「良いわ。戻りましょう」と促すマリ。
「はいっ!」明るく応えるミッチー・・・。

第3話。
萩乃の母親を装って前山教務主任に電話をかけるツバエル。タクシーで学園を去る萩乃。2年櫻花では、朝の失態をはやされる祐子先生。(笑)それにめげず学園祭の意義を力説しながらおどける祐子先生。萩乃のいない机を横に見て、ひたすら空の雲を見つめるマリ・・・。タクシーを降りる萩乃、ひっそりと咲くチョウセンアサガオ・・・道路脇の岩場から振り返るツバエル・・・。

第4話。
シバリエルの放った対人プローブからマリを護った萩乃。
「怖かったんだから〜。怖かったんだから〜!!」恐怖から解放され、萩乃にしがみつくマリ・・・驚いて目を見張る萩乃・・・。
「あったかい・・・」腕の中のマリを優しく抱きしめる萩乃。
「何よ〜それ〜!!もう〜・・・馬鹿、馬鹿・・・馬鹿〜・・・」泣きじゃくるマリ・・・。

「若竹〜!!」「マリさん〜!!」マリを探して倉庫街を走る朱音とミッチー。
「あっマリさん!」「萩乃も・・・?」対岸に手を繋いで立ち、片手を振るマリと萩乃に気づいた二人。
手を振りながらかけ出すマリと萩乃・・・。

「川島さん・・・さっき言ってた・・・自分に素直にって・・・?」
「んん?あ〜あれか〜・・・要するに、若竹は千光寺が気になってしょうがないんだよ・・・。あの二人が、何で意識し合ってるのかは分からないけどさ〜・・・・。お互い気になるって事に意味があるんだろ・・・多分・・・」
「・・・そうですね・・・。きっと・・・意味があるんですね・・・・」うなずくミッチー・・・。

光に包まれて、無心にかけ続けるマリと萩乃・・・。

第8話。
台本の筆が進まず、耐えきれずに寮から逃げ出したミッチー。寮の読書室で書き置きを見つけるマリと萩乃。「・・・探さないで下さい・・・」駆け去るミッチー。
ミッチーの実家を訪れ、ミッチーの消えた部屋で書棚を見つめるマリ。
BLUE艦内。オノミルの面影を求めて機関室に入ったアザナエル。「非常用コントロール・・・?ハッ!・・・まさか!・・ここで!!??」目を見張るアザナエル。
ミッチーの部屋で、母親の話を聞き、幼い頃の落書き帳を見て目を細めるマリ。

第11話。
「だから言ったのに・・・」BLUEの被害の大きさにため息をつき、疲れた表情でつぶやくツバエル。アザナエルの計略によってマリとの絆を絶たれ、暗いままのオノミルの部屋で泣き続ける萩乃・・・。
そこに現れたのは・・・光を帯びたオノミルの幻。
「ぇ・・・・オノミル・・・!?」
「お久しぶりです・・・コマンダーエカリル・・・」かすかに頬を染めうなずくオノミル・・・。

「じゃあ。出だしのところから通してやってみますね・・・」学園の講堂で通し稽古に入ったミッチーたち。萩乃への思いから稽古に身が入らず立ち往生するマリ。戸惑うミッチーたち・・・。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい!オノミル!」
オノミルに謝罪の言葉を繰り返す萩乃・・・見つめるオノミル・・・。
「相変わらずですね・・・コマンダー。そこが良いところなんですけど・・・」微笑みながら消えていくオノミル・・・。
「待って!オノミル!!」叫ぶ萩乃・・・。
「あんまり・・・一人で抱え過ぎないでくださいね・・・」暗い部屋に消えていくオノミルの声・・・。
「オノミル・・・・。良く・・・言われたっけね・・・」立ち尽くしたまま、かすかに微笑む萩乃・・・。

第12話。
学園祭の前夜祭が始まり、ファイヤー・ストームに歓声を上げる仲間たち。プールサイドで語り合うマリと萩乃。
「・・・怖くてほんとのこと言えなかった・・。言ってしまったら・・・きっと・・・今度こそ・・・あなたを・・・」涙を流し、震えながら話す萩乃・・・。そんな萩乃を引っぱき、さらにプールに突き落としてから後を追って飛び込むマリ。水中で萩乃に満面の笑みを見せるマリ・・・。手を取り合って微笑み合うマリと萩乃・・・・。
「大好き!」こだまする二人の心・・・。

「コマンダー・・・やっぱり・・・笑ってる方が良いですよ・・・」つぶやきとともに消えるツバエル・・・。

月の光を浴びながら、プールの中で笑い合うマリと萩乃・・・。

う〜ん・・・ちょっと一言では言えませんが曲名が曲名ですから、そのまま「Nostalgia(郷愁)」としか言いようがないですね。(笑)曲が長いだけに、複数の場面に亘って流れていて、単なるBGMという扱いのようなところもありますが、やはりこれらはミッチーの思い出の中に刻まれた「大切な思い出」なのでしょう・・・。

第1話では、劣等感にさいなまれるミッチーに「良いお父さんじゃない」のさりげない一言をかけるマリと、その一言で生き返ったような表情になるミッチー、そして、最終話につながるミッチーの萩乃賛歌が印象的。ミッチーにとってのマリと萩乃、二人の存在感の大きさが分かります。

第3話、4話は、マリにとっての萩乃の存在の大きさを、ミッチーも感じ取ったと言うことでしょう。

第8話は、ミッチー自信の辛い記憶でもありますが、アザナエルにとってはオノミルの生きた証を探し求める場面ですね。マリがミッチーの落書き帳を見て微笑むのは、第4話、休日の朝のベランダで聞いたミッチーの生い立ちを思い出したからでしょう。それぞれがそれぞれに想う場面です・・・。

第8話の一部、第11話のほとんどと12話はミッチーが目撃した記憶とは言えませんが、全13話全体がミッチーの記憶であるとすれば良いでしょう。しみじみと胸に迫る、大切な・・・美しい記憶です・・・。ラブ

2008.07.22 Tuesday

馬鹿

先日の読売新聞に面白い記事があったのでメモがてら、本も紹介しておこうかな・・・。

「編集手帳」という1面のコラムですが、「バカ市長」裁判を取り上げて関連する事などを面白可笑しく書いていましたね。

向田邦子さんは『「バカ」が放送禁止用語になったらテレビドラマやめます』と言ったとか。そして、大分県の教員採用試験がらみの騒動を『賄賂でわが子に教員の資格を買い与えた親は結局のところ、子供の人生を狂わせ、辱めただけである。「親ばか」も度を超せば、親の一字を消さねばなるまい』と切って捨てる。

面白いのはこの後である。

『三省堂の新明解国語辞典で「バカ」を引く。「ばかばか=女性が、相手を甘えた態度で避難して言う言葉」。」言いたくもない「バカ」はつい口をついてでるわ、聞いてもいい「ばかばか」は聞いたこともないわ、ままにならない言葉ではある』

ま、普通のおじさんが聞ける言葉ではないね。(笑)

問題なのはそんなことでは無くて〜、新明解国語辞典の記述です。(笑)

手元にこの辞書はないのですが、この辞書の特異な内容を書いた本があります。

新解さんの謎 (文春文庫)
新解さんの謎 (文春文庫)
赤瀬川 原平 (1999年4月刊)

同じような本が結構出ているようですが、手元にあるのはこれ。実に個性的で面白い、お節介とも思える「新解さん」についてのウンチク本で、暇つぶしにピッタリ。(笑)

気になったのは、新聞に書いてあることと、この本の内容がすでに違うということ。新聞の記述は多分最新版の内容でしょうが、本の内容は、「女性」うんぬんという部分に関してだけ見ると辞書の記述の中の「例文」が紹介されているだけですね。それは『=女性語で相手に甘える時の言い方』という内容です。ちなみにこれは第3版らしい。同じようですが、微妙に変わってますね。三省堂のHPを見ると現在は第6版となってますから、変わっていて当然かな?(笑)日々変貌を続ける日本語にあわせて辞書もまた・・・と言う事が分かって興味深いですね。

たかが「バカ」されど「バカ」・・・か。(笑)

そうそう、検索してみたら同じような内容のHPもあるようですね。たとえばこちらとか。探せばまだまだありそうです。お暇な方はどうぞ。

「バカ」と言えば・・・アニメ「BLUE DROP」にもありましたね、第4話のラストに・・・。

「あったかい・・・」言いながら、腕の中のマリを優しく抱きしめる萩乃。
「何よ〜それ〜!!もう〜・・・バカ、バカ・・・バカ〜・・・」泣きじゃくるマリ・・・。

確かに女性の言葉だけど、相手も女性とは「新解さん」も想定外だろうな。(笑)本

2008.07.21 Monday

松尾 由美「人くい鬼モーリス」



人くい鬼モーリス (ミステリーYA!)
松尾 由美 (2008年6月刊)

う〜ん素晴らしい装丁です!!

カラフルなんだけど落ち着いた色合い。帽子を被って振り向いた美少女。花や蝶に囲まれた白いワンピース姿が印象的。裏表紙には主人公のお姉さんの姿も・・・。あちこちのカットもそれらしくセンスが良いです。さすが理論社!!ですね。

しかし、その美しい装丁に似合わぬ「人くい鬼モーリス」という書名・・・曲者です!!(笑)

「ふたりの少女にしか見えない人くい鬼の存在。外界と遮断された別荘地で起きる連続死体消失事件。人くい鬼の仕業じゃないとしたら、犯人はいったい誰? 少女と人くい鬼の不思議な絆を描く、さわやかでマジカルなミステリー」
(〜amazon)

主人公は「村尾信乃」。再婚した母親との間にわだかまりを感じる高校2年生。夏休みのアルバイトに赴いたのは高級別荘地。家庭教師の触れ込みながら、実際は美少女「芽里沙」(10歳?)の遊び相手。採用の条件は・・・大人には見えない「人くい鬼モーリス」が見えること!!

読み始めは普通の女子高生の日常が語られますが、芽里沙が登場すると一変!!美少女です!!小生意気なガキです!!でも可愛いから許してしまう・・・。(笑)漂うのはセレブな雰囲気・・・。

そんな彼女の秘密のペット?が怪物「モーリス」・・・・!!??

緑豊かな高原の別荘地。美少女と怪物の交流。その有様に困惑しながらも、家族の愛を知らない芽里沙の孤独を知り、モーリスという不可思議な存在を徐々に受け入れていく主人公。そんな二人と近所の別荘族の人々との交流を楽しむ日常の中で、突然起こる殺人??と死体消失事件!!??犯人はモーリス??戸惑う二人の選択は!!??というお話。

う〜ん、中々楽しめます。多数の登場人物がいますし、後半は犯人捜しの話になって展開に少し無理な部分が無くはないですが、その場に居ない芽里沙の母親や祖父の記憶の話も絡んで物語に深みを与えています。

心優しき異形のものに心通わす美少女、そしてその心に応えるモーリス・・・。

結末は・・・ちょっと切なく・・・静かな余韻をもって終わります・・・。


作者はあとがきでこのモーリスとの出会いを書いています。実物はアメリカで見た絵本の中の怪物で、モーリス・センダックという作家が1963年に出版した「Where The Wild Things Are」の中に描かれているそうです。子供とともにアメリカの保育園の床に座って歓声を上げながら読んだ絵本・・・この作品はその絵本に対するオマージュだそうです。

英語版はこれですね。
Where the Wild Things Are
Where the Wild Things Are
Maurice Sendak

翻訳版もあります。
かいじゅうたちのいるところ
かいじゅうたちのいるところ
モーリス・センダック,じんぐう てるお,神宮 輝夫,Maurice Sendak

わがままそうに見えて純真な美少女と悩み多き女子高生・・・。そんな二人と、人知を超えた切ない存在の交流・・・。大人になることの悲しみも描かれています・・・。

夏休みにピッタリですね。読書

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