2007.09.30 Sunday
アニメ「十二国記」第39話 第40話
第三十九話 「風の万里 黎明の空」終章
蜂起の起きた拓峰の街へ王直属の軍隊である禁軍が陽子達の敵として現れる。だがそれによって陽子は、王の了解を得ず勝手に禁軍を動かした人物がいる事を知り、呀峰と昇紘の後ろ盾として裏で取りまとめていた元冢宰・靖共の存在に気付く。
靖共にこれ以上勝手はさせないと決意する陽子のもとに、金色の鬣を持つ一頭の獣が舞い降りる。その光景を呆然と見つめる誰しもが、それがこの慶国に唯一無二の存在、「麒麟」だと分かる。
第四十話 「乗月」
芳国で、恵州候・月渓が先代の峯王・冽王を討って4年の年月が流れた。
慶国の新しい禁軍将軍・桓魋は、空座となった玉座を月渓が仮王として治めていると聞き、景王・陽子からの親書を持って芳国を訪れた。
しかし月渓は、朝廷が多少なりとも鎮まった今、恵州に戻る決意をしていた。冽王を討つという大罪を犯した自分が、王宮に留まり仮だとしても王として国を治めてはいけないと考えていたのだ。
(〜NHK HP)
「終章」
雲を突き抜けてやって来る・・・・獣!!郷城胸壁で待つ陽子の前に獣形の麒麟が駆けつける。待ち構える禁軍を見下ろす・・・景麒に騎乗した景王赤子!!真の王の威厳に勝負は付いた・・・。
やるべきことを果たした陽子は、明郭の浅野のもとへ・・・。
寝台の上に横たわるのは、かすかに微笑む浅野の遺体・・・。
「浅野・・・・」泣く鈴・・。
「笑っている・・・」つぶやく祥瓊・・・。
「この刀が見せてくれたから・・・もう間に合わないのは知っていた・・・」水禺刀を浅野の上半身に置き、つぶやく陽子・・・。
「そんな・・・」目を伏せる祥瓊。
「刀に映った浅野君は・・・笑っていた・・・。でも、私の望む幻も見せる・・・。だから、私が笑っていて欲しいと思ったからかも知れないと・・・。でも・・・本当だった・・・」
「そうね・・・笑っている・・・」うなずく鈴・・。陽子も涙を流す。
「済まないが・・・彼を埋めてやりたい・・・」
「いいの?彼はあちらに・・・」戸惑う祥瓊。
「彼は・・・ここで生きて死んだ・・・。だから・・・ここに眠りたいのだと思う・・・」
・
・
・
落ち着いてから外で語り合う3人。これから何をするか・・・そして・・・。
「良い国っていうのは・・・何なんだろう?・・・二人はどういう生き方がしたい?そのためには、どういう国であって欲しい?」改まって聞く陽子。
「寒いのや、ひもじいのは嫌だわ・・・。それに・・・私が言ってはいけないのだけど、やっぱり誰かに辛く当たられたり、さげすまれるのは嫌だった・・・。それに耐えるうちに、自分だけが不幸に耐えているように誤解しちゃう・・・」答える祥瓊。続けて鈴も。
「あたしもそうだったなぁ・・・。我慢するのを止めれば良かったのに・・・そういうのを我慢していると、何だか気持ちが小さくなってしまうのよねぇ・・・」
「そうそう・・・。でも・・・これって全然答えにならないわね?・・・」戸惑う祥瓊。(笑)
「いや・・・参考になった・・・」
「本当?」意外そうな鈴。
「うん・・・。それで、その用が終わったら、二人はどうする?・・・私もまだまだ遠甫に学びたい・・・。もし遠甫が無事で、金波宮に来てくれたら・・・二人ともそこで働きながら学ばないか?」
「えっ?」「待って!」驚く鈴と祥瓊。
「私は今、一人でも多くの手助けが欲しい。あの王宮の中で、信じることの出来る人が、本当に一人でも多く必要なんだ」
驚きで茫然とする鈴と祥瓊・・・大きなため息をついて祥瓊が言う。
「しょうがないわね・・・行ってあげてもいいわ・・・」もったいぶった祥瓊の答えを聞いた鈴もうれしそうに・・。(笑)
「陽子がどうしてもって言うなら・・・助けてあげないでも無いかな〜〜〜??」
「どうしても!!」パチンと手を合わせ、おどけた様に答える陽子。(笑)
顔を見合わせて、思わず笑い出す3人娘・・・・。(笑)
・
・
・
金波宮で、遠甫と語り合う陽子。
「わしは道を貫いたつもりだった・・・。だが・・道とは他者の命を犠牲にするものではあるまい。ならば、わしの貫いたものは何だったんだろうな・・・?この歳になってもまだこうして迷う・・・。時々、わしは道を説く事よりも、田を耕す事、武器を持って戦うことの方が、はるかに意義があるように思える事がある・・・」
「遠甫は、民に、種をまいてらっしゃるのではないですか?」
「なるほどな・・・。わしのように長生きしてもまだ迷う・・・。陽子のような若造に諭される。人というのはその程度のものだ・・・」
陽子が遠甫を太師に、と願い出る。すると遠甫は、自分はかつてここで達王に仕えた「老松」「乙悦」だと告白し、居合わせた一同は驚ろかされる・・・。
久しぶりの朝堂で、玉座を占めて官吏の前に立つ景王陽子。官吏の移動、綱紀粛正を命じ・・・そして言う。
「良心に恥じる事がない者は狼狽するに及ばない。みんな・・・立ちなさい!!」どよめく官吏たち・・・陽子は続ける。
「景麒にも聞いてもらおう・・・」
「私は人に礼拝されたり、人の間に序列ある事が好きではない。相手の顔が見えないことが嫌だ・・・。人から叩頭されることも、叩頭する人を見るのも不快だ」
「これ以後、礼典、祭典、及びもろもろの定めある儀式、他国からの賓客に対する場合を除き、伏礼を廃し、跪礼、立礼のみとする!!」
「主上!!」驚く景麒!!
「もう決めた・・・」
「侮られたと、怒る者が居りましょう」諌める景麒。
「他者に頭を下げさせて、それで己の地位を確認しなければ安心できない者のことなど、私は知らない。それよりも、人に頭を下げる度、壊れていく物の方が問題だと・・・私は思う・・・。人はね景麒・・・」諭すように話しかける陽子。
「真実相手に感謝し、心から尊敬の念を感じた時には、自然に頭が下がるものだ・・・。他者に対しては礼をもって接する、そんな事は当たり前の事だし、するのしないも、本人の品性の問題で、それ以上のことではないだろう・・と言っているんだ・・・」
「それは・・・そうですが・・・」戸惑う景麒。
「私は・・・慶の民の誰もに王になってもらいたい・・・」官吏たちに向き直り、語り続ける陽子。
「地位でもって礼を強要し、他者を踏みにじることに慣れた者の末路は、昇紘、呀峰の例を見るまでも無く明らかだろう。そしてまた、踏みにじられる事を受け入れた人々が辿る道も・・・」
「人は誰の奴隷でもない。そんな事のために生まれるのじゃない。他者に虐げられても屈する事の無い心。災厄に襲われてもくじける事の無い心。不正があれば正す事を恐れず、獣に媚びず、私は慶の民に、そんな不羈の民になって欲しい。己といういう領土を治める唯一無二の君主に!そのためにまず、他者の前で毅然と、頭を上げることから初めて欲しい・・・」
「諸官は私に、慶をどこに導くのだと聞いた・・・これで答えになるだろうか?」
「その証として、伏例を廃す・・・」凛とした陽子の声が響く・・・・。
「これをもって、初勅とする!!」
〜「完」〜
「風の万里 黎明の空」編はこれで終わり。
「乗月」
この40話から、アニメでは「東の海神 西の滄海」編となる。原作では短編集の「華胥の幽夢」所収。公主「祥瓊」追放後の後日談である。
陽子と祥瓊の手紙を携えて芳国を訪れた桓魋。祥瓊についての話を聞きいぶかる月渓に言う。
「人は変わる事が出来るんです。幸いな事に・・・」
納得のいかない表情の月渓・・・。
恩義ある冽王に対する思いから、仮王に立つ事を渋る月渓。桓魋と月渓は語り合う。
「峯王を・・・敬愛しておられたのですね・・・」
「民が主上を恨む・・・それはあまりにも当然で・・・しかし、いたたまれないほど辛かった・・・。あの方を憎みたくなかった・・・。私にとってあの方は・・・清廉潔白で・・・真っ白な・・・。だから・・・これ以上憎みたくないから・・・殺したのだ!!」うめく様に続ける月経・・・。
「民の為ではない・・・私怨だ!!・・・だから・・・」
「それは、民の為と同義です・・・」桓魋の言葉に驚く月渓。
「恵州侯にとって良い王とは、民のためになる王だった・・・。峯王にそうあって欲しかった・・・」桓魋を見つめていた月渓は、顔を背けて言う。
「やはり玉座にはつけぬ。それでは文字通り簒奪だ・・・。どんな言い訳も許されない!」言い張る月渓。
「言い訳?誰に対する言い訳なのですか?」問いかける桓魋。言葉に詰まる月渓・・・。
「あぁ・・・失礼を・・・」謝る桓魋。
「いや・・・確かに私は主上に対して言い訳をしたかったのだ・・・。憎かったのでも、軽んじたのでも、ましてや位が欲しかったわけでもない・・・と。いや私は・・・そう・・・せめて自分自身に申し開きがしたいのだ・・・。この上玉座を盗めば、私は自分に言い訳のしようも無くなる・・・。そんな私を・・・祥瓊様は笑うだろう・・・」
「恵州侯が国主でおられるからには、芳が荒れ果てていることはあるまい・・・。そう祥瓊が申したから、主上は私を遣わされました・・・」うめく月渓・・・。
「先ほど内乱と申しましたが、実は私たちが起こしたものでした」驚く月渓。
「私も罪人です・・・」静かに続ける桓魋。
「しかし・・・日が落ち、深い闇が道を塞いでも、月は照らしてくれます・・・」
頭上の満月を見上げる二人・・・。
「そうだ・・・月陰の朝というのはどうでしょう?仮朝でも偽朝でもなく、王が玉座にあるのを日陽の朝とするならば、王のいない朝は月陰の朝じゃないかな?・・・月に乗じて・・・暁を待つ・・・・」
「なるほど・・・・」考え込む月渓・・・。
祥瓊の懺悔の手紙を読み、涙を拭う月渓。
罰を受ける為、一人恭に向かったという祥瓊への寛大な処置を願う為、供王に書状を出そうとする。桓魋が聞く。
「しかし僭越ながら・・・。それはいかなる肩書きをもって出される書状でございましょうか?」
「確かに、一州侯が他国の王に、罪人の減刑を申し出ることなど出来ぬ・・・。恐れながら・・・芳の国主としてお願いしよう」うなずく桓魋。
「確かに人は変わることが出来るようだ・・・」つぶやく月渓・・・。
恭に向かう祥瓊。帰国する桓魋がやって来る・・・。
「もし恭国にあるを見つければ・・・叩き出す!!」供王の言葉を伝える桓魋。困惑する祥瓊。吉量に祥瓊を引き上げながら桓魋は言う。
「供王は罪の陳謝に及ばずと言って下さったんだ。どこへなりとも行け!とな・・・。」
「恵州侯は、祥瓊に詫びたいと言っておられた・・・」
「私に?月渓が??」
「あなたの父上のものを盗む・・・と、そしてあなたのことを思案するのも、これを最後にすると・・・」
「それで良いのよ・・・。月渓には民が待っているのだから・・・」
「それともう一つ・・・。恵州侯はお前の歌が好きだった・・・と」
「ウソ!!」目を閉じて叫ぶ祥瓊。
「何故だ?」
「あれは人形の歌よ!!自分が人形と知らぬ人形の歌・・・。今は私だって忌み嫌っている!!なのに・・・どうして・・・・?」泣く祥瓊。
「どうしてそんなこと言うの?!」泣き続ける祥瓊・・・。
「良かったな・・・」祥瓊の肩に手をかけ語りかける桓魋・・・。
陽子にとっても鈴や祥瓊にとっても、今までの過去を振り返り、新たな一歩を踏み出すための日々が描かれる第39話、40話です。「不羈の民に」と呼びかける陽子の凛々しい姿。朱旌や采王主従と再会する鈴の姿。楽俊と再会し全てを清算するため、恭に向かって歩く祥瓊、月渓の思いに泣く祥瓊の姿。そして月渓と桓魋の深い会話・・・。印象的な場面が随所にあります。じっくりと見てください。
次回からは十二国記シリーズの最後を飾る「東の海神 西の滄海」編が始まります。
蜂起の起きた拓峰の街へ王直属の軍隊である禁軍が陽子達の敵として現れる。だがそれによって陽子は、王の了解を得ず勝手に禁軍を動かした人物がいる事を知り、呀峰と昇紘の後ろ盾として裏で取りまとめていた元冢宰・靖共の存在に気付く。
靖共にこれ以上勝手はさせないと決意する陽子のもとに、金色の鬣を持つ一頭の獣が舞い降りる。その光景を呆然と見つめる誰しもが、それがこの慶国に唯一無二の存在、「麒麟」だと分かる。
第四十話 「乗月」
芳国で、恵州候・月渓が先代の峯王・冽王を討って4年の年月が流れた。
慶国の新しい禁軍将軍・桓魋は、空座となった玉座を月渓が仮王として治めていると聞き、景王・陽子からの親書を持って芳国を訪れた。
しかし月渓は、朝廷が多少なりとも鎮まった今、恵州に戻る決意をしていた。冽王を討つという大罪を犯した自分が、王宮に留まり仮だとしても王として国を治めてはいけないと考えていたのだ。
(〜NHK HP)
「終章」
雲を突き抜けてやって来る・・・・獣!!郷城胸壁で待つ陽子の前に獣形の麒麟が駆けつける。待ち構える禁軍を見下ろす・・・景麒に騎乗した景王赤子!!真の王の威厳に勝負は付いた・・・。
やるべきことを果たした陽子は、明郭の浅野のもとへ・・・。
寝台の上に横たわるのは、かすかに微笑む浅野の遺体・・・。
「浅野・・・・」泣く鈴・・。
「笑っている・・・」つぶやく祥瓊・・・。
「この刀が見せてくれたから・・・もう間に合わないのは知っていた・・・」水禺刀を浅野の上半身に置き、つぶやく陽子・・・。
「そんな・・・」目を伏せる祥瓊。
「刀に映った浅野君は・・・笑っていた・・・。でも、私の望む幻も見せる・・・。だから、私が笑っていて欲しいと思ったからかも知れないと・・・。でも・・・本当だった・・・」
「そうね・・・笑っている・・・」うなずく鈴・・。陽子も涙を流す。
「済まないが・・・彼を埋めてやりたい・・・」
「いいの?彼はあちらに・・・」戸惑う祥瓊。
「彼は・・・ここで生きて死んだ・・・。だから・・・ここに眠りたいのだと思う・・・」
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落ち着いてから外で語り合う3人。これから何をするか・・・そして・・・。
「良い国っていうのは・・・何なんだろう?・・・二人はどういう生き方がしたい?そのためには、どういう国であって欲しい?」改まって聞く陽子。
「寒いのや、ひもじいのは嫌だわ・・・。それに・・・私が言ってはいけないのだけど、やっぱり誰かに辛く当たられたり、さげすまれるのは嫌だった・・・。それに耐えるうちに、自分だけが不幸に耐えているように誤解しちゃう・・・」答える祥瓊。続けて鈴も。
「あたしもそうだったなぁ・・・。我慢するのを止めれば良かったのに・・・そういうのを我慢していると、何だか気持ちが小さくなってしまうのよねぇ・・・」
「そうそう・・・。でも・・・これって全然答えにならないわね?・・・」戸惑う祥瓊。(笑)
「いや・・・参考になった・・・」
「本当?」意外そうな鈴。
「うん・・・。それで、その用が終わったら、二人はどうする?・・・私もまだまだ遠甫に学びたい・・・。もし遠甫が無事で、金波宮に来てくれたら・・・二人ともそこで働きながら学ばないか?」
「えっ?」「待って!」驚く鈴と祥瓊。
「私は今、一人でも多くの手助けが欲しい。あの王宮の中で、信じることの出来る人が、本当に一人でも多く必要なんだ」
驚きで茫然とする鈴と祥瓊・・・大きなため息をついて祥瓊が言う。
「しょうがないわね・・・行ってあげてもいいわ・・・」もったいぶった祥瓊の答えを聞いた鈴もうれしそうに・・。(笑)
「陽子がどうしてもって言うなら・・・助けてあげないでも無いかな〜〜〜??」
「どうしても!!」パチンと手を合わせ、おどけた様に答える陽子。(笑)
顔を見合わせて、思わず笑い出す3人娘・・・・。(笑)
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金波宮で、遠甫と語り合う陽子。
「わしは道を貫いたつもりだった・・・。だが・・道とは他者の命を犠牲にするものではあるまい。ならば、わしの貫いたものは何だったんだろうな・・・?この歳になってもまだこうして迷う・・・。時々、わしは道を説く事よりも、田を耕す事、武器を持って戦うことの方が、はるかに意義があるように思える事がある・・・」
「遠甫は、民に、種をまいてらっしゃるのではないですか?」
「なるほどな・・・。わしのように長生きしてもまだ迷う・・・。陽子のような若造に諭される。人というのはその程度のものだ・・・」
陽子が遠甫を太師に、と願い出る。すると遠甫は、自分はかつてここで達王に仕えた「老松」「乙悦」だと告白し、居合わせた一同は驚ろかされる・・・。
久しぶりの朝堂で、玉座を占めて官吏の前に立つ景王陽子。官吏の移動、綱紀粛正を命じ・・・そして言う。
「良心に恥じる事がない者は狼狽するに及ばない。みんな・・・立ちなさい!!」どよめく官吏たち・・・陽子は続ける。
「景麒にも聞いてもらおう・・・」
「私は人に礼拝されたり、人の間に序列ある事が好きではない。相手の顔が見えないことが嫌だ・・・。人から叩頭されることも、叩頭する人を見るのも不快だ」
「これ以後、礼典、祭典、及びもろもろの定めある儀式、他国からの賓客に対する場合を除き、伏礼を廃し、跪礼、立礼のみとする!!」
「主上!!」驚く景麒!!
「もう決めた・・・」
「侮られたと、怒る者が居りましょう」諌める景麒。
「他者に頭を下げさせて、それで己の地位を確認しなければ安心できない者のことなど、私は知らない。それよりも、人に頭を下げる度、壊れていく物の方が問題だと・・・私は思う・・・。人はね景麒・・・」諭すように話しかける陽子。
「真実相手に感謝し、心から尊敬の念を感じた時には、自然に頭が下がるものだ・・・。他者に対しては礼をもって接する、そんな事は当たり前の事だし、するのしないも、本人の品性の問題で、それ以上のことではないだろう・・と言っているんだ・・・」
「それは・・・そうですが・・・」戸惑う景麒。
「私は・・・慶の民の誰もに王になってもらいたい・・・」官吏たちに向き直り、語り続ける陽子。
「地位でもって礼を強要し、他者を踏みにじることに慣れた者の末路は、昇紘、呀峰の例を見るまでも無く明らかだろう。そしてまた、踏みにじられる事を受け入れた人々が辿る道も・・・」
「人は誰の奴隷でもない。そんな事のために生まれるのじゃない。他者に虐げられても屈する事の無い心。災厄に襲われてもくじける事の無い心。不正があれば正す事を恐れず、獣に媚びず、私は慶の民に、そんな不羈の民になって欲しい。己といういう領土を治める唯一無二の君主に!そのためにまず、他者の前で毅然と、頭を上げることから初めて欲しい・・・」
「諸官は私に、慶をどこに導くのだと聞いた・・・これで答えになるだろうか?」
「その証として、伏例を廃す・・・」凛とした陽子の声が響く・・・・。
「これをもって、初勅とする!!」
〜「完」〜
「風の万里 黎明の空」編はこれで終わり。
「乗月」
この40話から、アニメでは「東の海神 西の滄海」編となる。原作では短編集の「華胥の幽夢」所収。公主「祥瓊」追放後の後日談である。
陽子と祥瓊の手紙を携えて芳国を訪れた桓魋。祥瓊についての話を聞きいぶかる月渓に言う。
「人は変わる事が出来るんです。幸いな事に・・・」
納得のいかない表情の月渓・・・。
恩義ある冽王に対する思いから、仮王に立つ事を渋る月渓。桓魋と月渓は語り合う。
「峯王を・・・敬愛しておられたのですね・・・」
「民が主上を恨む・・・それはあまりにも当然で・・・しかし、いたたまれないほど辛かった・・・。あの方を憎みたくなかった・・・。私にとってあの方は・・・清廉潔白で・・・真っ白な・・・。だから・・・これ以上憎みたくないから・・・殺したのだ!!」うめく様に続ける月経・・・。
「民の為ではない・・・私怨だ!!・・・だから・・・」
「それは、民の為と同義です・・・」桓魋の言葉に驚く月渓。
「恵州侯にとって良い王とは、民のためになる王だった・・・。峯王にそうあって欲しかった・・・」桓魋を見つめていた月渓は、顔を背けて言う。
「やはり玉座にはつけぬ。それでは文字通り簒奪だ・・・。どんな言い訳も許されない!」言い張る月渓。
「言い訳?誰に対する言い訳なのですか?」問いかける桓魋。言葉に詰まる月渓・・・。
「あぁ・・・失礼を・・・」謝る桓魋。
「いや・・・確かに私は主上に対して言い訳をしたかったのだ・・・。憎かったのでも、軽んじたのでも、ましてや位が欲しかったわけでもない・・・と。いや私は・・・そう・・・せめて自分自身に申し開きがしたいのだ・・・。この上玉座を盗めば、私は自分に言い訳のしようも無くなる・・・。そんな私を・・・祥瓊様は笑うだろう・・・」
「恵州侯が国主でおられるからには、芳が荒れ果てていることはあるまい・・・。そう祥瓊が申したから、主上は私を遣わされました・・・」うめく月渓・・・。
「先ほど内乱と申しましたが、実は私たちが起こしたものでした」驚く月渓。
「私も罪人です・・・」静かに続ける桓魋。
「しかし・・・日が落ち、深い闇が道を塞いでも、月は照らしてくれます・・・」
頭上の満月を見上げる二人・・・。
「そうだ・・・月陰の朝というのはどうでしょう?仮朝でも偽朝でもなく、王が玉座にあるのを日陽の朝とするならば、王のいない朝は月陰の朝じゃないかな?・・・月に乗じて・・・暁を待つ・・・・」
「なるほど・・・・」考え込む月渓・・・。
祥瓊の懺悔の手紙を読み、涙を拭う月渓。
罰を受ける為、一人恭に向かったという祥瓊への寛大な処置を願う為、供王に書状を出そうとする。桓魋が聞く。
「しかし僭越ながら・・・。それはいかなる肩書きをもって出される書状でございましょうか?」
「確かに、一州侯が他国の王に、罪人の減刑を申し出ることなど出来ぬ・・・。恐れながら・・・芳の国主としてお願いしよう」うなずく桓魋。
「確かに人は変わることが出来るようだ・・・」つぶやく月渓・・・。
恭に向かう祥瓊。帰国する桓魋がやって来る・・・。
「もし恭国にあるを見つければ・・・叩き出す!!」供王の言葉を伝える桓魋。困惑する祥瓊。吉量に祥瓊を引き上げながら桓魋は言う。
「供王は罪の陳謝に及ばずと言って下さったんだ。どこへなりとも行け!とな・・・。」
「恵州侯は、祥瓊に詫びたいと言っておられた・・・」
「私に?月渓が??」
「あなたの父上のものを盗む・・・と、そしてあなたのことを思案するのも、これを最後にすると・・・」
「それで良いのよ・・・。月渓には民が待っているのだから・・・」
「それともう一つ・・・。恵州侯はお前の歌が好きだった・・・と」
「ウソ!!」目を閉じて叫ぶ祥瓊。
「何故だ?」
「あれは人形の歌よ!!自分が人形と知らぬ人形の歌・・・。今は私だって忌み嫌っている!!なのに・・・どうして・・・・?」泣く祥瓊。
「どうしてそんなこと言うの?!」泣き続ける祥瓊・・・。
「良かったな・・・」祥瓊の肩に手をかけ語りかける桓魋・・・。
陽子にとっても鈴や祥瓊にとっても、今までの過去を振り返り、新たな一歩を踏み出すための日々が描かれる第39話、40話です。「不羈の民に」と呼びかける陽子の凛々しい姿。朱旌や采王主従と再会する鈴の姿。楽俊と再会し全てを清算するため、恭に向かって歩く祥瓊、月渓の思いに泣く祥瓊の姿。そして月渓と桓魋の深い会話・・・。印象的な場面が随所にあります。じっくりと見てください。
次回からは十二国記シリーズの最後を飾る「東の海神 西の滄海」編が始まります。