大人が絵本に涙する時
柳田 邦男
う〜ん・・・恥ずィ〜かな??(笑)
と、ちょっと思いましたが、真面目な本ですよ。(笑)
柳田邦男と言えば・・・有名な方ですね・・・それだけは知ってます。(笑)
6年くらい前から、絵本に関わるようになり、「大人も絵本を」と言う活動を続けてこられたということです。この本は、その辺の活動や雑誌記事、連載などをまとめた物ですね。
有名無名?沢山の絵本が紹介されています。アマゾンでは「絵本はユーモア、悲しみ、思いやりなど、生きるうえで大切なものに深く気づかせてくれる。心の潤いを取り戻すために、大人こそ絵本を読もう。柳田邦男が愛する80冊の絵本を紹介。 」と。
大きく言えば、病気や別れ、孤独などで精神的に苦しむ大人も、絵本を読むことで「癒し」が得られるという事でしょうか。人間的に柔らかく、感性豊かになり、人生が明るく過ごせる?そんな内容ですね。目新しいのは、それは個人だけではなく、家族、友人、地域社会も含めての拡がりがあると言う点で、その説明が著者の活動の紹介も交えて書かれています。
読んでいて「あっ」と思ったのは、先日投稿した「養護施設出身 23歳 「心の壁」と分かれる日」で書かれていた「人生に最初から意味があるわけではない。意味は自分で作るものなのだ。」というオーストリアの精神科医、フランクルの言葉がこの本にも出てきまして・・・。フランクルという人は有名な「夜と霧」の著者なんですね。(読んだこと無いけど・・。)一部引用します。この文は「生き方のコペルニクス的転回」と題した部分で、「ともだちからともだちへ」という、クマネズミが主人公の絵本について説明しているのですが・・・。
明日ガス室で殺されるかもしれないという状況の中で、今日を生きる意味はあるのかという、極めて厳しい問いに対する答えの出し方についてだった。フランクルは「夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録」(霧山徳爾訳、みすず書房)の中で、こう書いているのだ。「ここで必要なのは生命の意味についての観点変更なのである。すなわち人生から何をわれわれはまだ期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生が何をわれわれから期待いるかが問題なのである。」これをわかりやすく言うと、生きる意味というものは、何かいいことがあるだろうと受身でまっていたのでは見つからない、たとえ絶望的な状況下であっても、自分は最後までこう生きたと人生の物語の最終章を自分で書いてはじめて、それが人生から期待されたことへの答えとなるものであり、人生の意味になるのだ、というのである。
これが、「友達がいないと嘆くのではなく、自分から誰か悩める人のところへ出かけて行ってこそ、本当の友達になれるのだというクマネズミの気づきは、まさにフランクルの言う「人生の答え」の出し方の図式そのものと言えるだろう。絵本はあなどれない。人間が生きるうえで、一番大事なことを語っているのだ。」と続く・・・・。
う〜ん。まさに人生哲学ですね。この辺はちょっと難しいけど、他の部分は分かり易い内容だと思います。
フランクルについては別のページで、自然をテーマにした絵本の話の中でも取り上げています。(以下大意)
強制収容所という極限の状況でも、生き生きとした表情を失わない病気の少女に、フランクルが問いかけると・・・。窓の外の一本のマロニエの樹をみて答えた。「あそこにある樹はひとりぽっちの私のただ一つのお友達ですの」「あの樹はこう申しましたの。私はここにいる・・・私は・・・ここにいる。私はいるのだ。永遠のいのちだ・・・」彼女はその日息を引き取った。自然の存在が彼女の内面的な拠り所となっていたがゆえに、最期のときまで目に輝きを持って生き抜けたというのだ。
著者は自ら翻訳した絵本についても取り上げています。ここで「エリカ 奇跡のいのち」という今年の夏に出版された絵本の、原作との出会いの場面を引用しておきましょう。
生年月日も生まれた町も両親の名前もわからなかったので、育ての親の女性が推測で誕生日と名前を決めてくれたという。だから、出来事の経過は、すべて推測の文体になっている。「そとから(貨車の)とびらがしめられ、鉄の棒がさしこまれる音がひびいたとき、両親はきょうふで気をうしなわなかっただろうか?」「お母さまとお父さまは、そのだいじな決心をいつしたのだろうか?」「お母さまはわたしに、「ゆるしてね、ゆるしてね、ゆるしてね」といってくださったと思うの」・・・・といった自問自答が積み重ねられていくのだ。その表現によって、闇の彼方のユダヤ人一家の悲劇が鮮烈に浮かび上がってくるのだ。そして、最後の場面近くなって、母親が赤ん坊を貨車から外に放り投げたことを、エリカが、「お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです」という言葉で表現している文章に出逢ったとき、私は激しく心を揺さぶられ、Sさんに言った。「凄い本ですね。私に翻訳をやらせてください」
この本には、著者の絵本に対する、熱い思いがいっぱい書かれています。たまたま収容所関連を書きましたが、これはごく一部で、広いジャンルにわたって書かれています。最近の子供たちのこころの問題から、広い世界のお話まで。どちらかと言うと地味な本で、お涙頂戴の書き方ではないんですが・・・・あちこちで・・・結構泣けました〜。(笑)
なんだか心が疲れた・・・と言う方、読んでみてください。