2016.04.10 Sunday
村山早紀「竜宮ホテル」(徳間文庫)
『あやかしをみる不思議な瞳を持つ作家水守響呼は、その能力ゆえに世界に心を閉ざし、孤独に生きてきた。ある雨の夜、妹を捜してひとの街を訪れた妖怪の少女 を救ったことをきっかけに、クラシックホテル『竜宮ホテル』で暮らすことに。紫陽花が咲き乱れ南国の木々が葉をそよがせるそのホテルでの日々は魔法と奇跡 に彩られて…。美しい癒しと再生の物語!書下し「旅の猫 風の翼」を収録。 』
(〜amazon)
3話に番外編を加えた全4話ですが、それぞれ連続したお話なので全体での読後感はとても濃密。作者の自伝的部分も少しはあるのか?主人公が売れっ子作家なのに、第一話はとても暗いお話で面食らう。理由のある「孤独」を選ばざるを得なかった彼女が、話が進むうち笑顔を見せるようになるというのが全体のストーリーです。、
いつものように文章的にかなり乱暴な部分もあるけれど、言ってみれば魅力的な人物のタメ口みたいなものか?読み進むうちに独特の「語り口」となって気にならなくなるが凄い。(笑)
猫耳に黒い尻尾・・・妖怪少女から、はかなげな未来の少年(名前は違うが黄金旋律の主人公か?)・・・その他多彩な登場人物が古いホテルを舞台にして触れ合ううちに、それぞれの苦しみや悲しみが喜びに昇華していく情景はいつもながら素晴らしく、これでもかと繰り出される奇手の連続には唖然とされられながらも次第に湧き上がる人肌の温もりが心地よいお話になってます。かなり跳んでる所もあって、一言で言ったら「ハイパー・イリュージョン・ファンタジー」小説ですね。(笑)
全4話それぞれに良いが、中でも亡き父親に対する想いの部分は他人事ではなくて切なかった。携帯型タイムマシン・・・あんなものがあったら私にも会いたい人が・・・話したい言葉があります・・・。
続編もあるらしいし・・・見た目で迷っている人もどうぞ。