雪太郎のつぶやき

美しいもの、面白いもの、切ないもの、考えさせる物・・・。一人が好きだけど、独りじゃ寂しい。そんな私のつぶやき・・・・。
クラシック音楽が苦手な人にはお薦めできません。暗いのが嫌いな人にはお薦めできません!!お子様にもお薦めできません!!
[謝辞]
父と母に、家族に、多くの慰めと喜びを与えてくれた、過去、現在、そして未来の芸術家達に、感謝!!
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2014.08.16 Saturday

蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- 第12話(終)「航路を拓く力」

ついに最終話・・・細かな展開なので・・・左から右・・・上から下へ見て行ってください・・・。


前方に霧のアメリカ艦隊・・・後方からは、異形の物となったコンゴウが迫り窮地に追い込まれた「蒼き鋼」。ところが、コンゴウの放った超重力砲は前方の霧の艦隊を薙ぎ払い、次いで401に向けられ・・・一対一の・・・文字通り最後の戦いが始まる。

「異変」を感じたイオナ達は概念伝達によってコンゴウと接触・・・。荒れ果てたサロンでは・・・表情を失ったコンゴウが「私は貴様らを・・・殲滅する・・・」とつぶやいて接続を絶つ・・・。

イオナ達を道連れに破滅へと突き進むコンゴウは超重力砲を連射!「俺たちは止まる訳にはいかない・・・」と言う群像の言葉に、「私が・・・コンゴウを説得に行く」と応じたイオナは単身対艦ミサイルに身を潜ませて弾幕をくぐり抜け、激しい戦いの末、遂にはコンゴウに接触!!失う事の痛みを知るイオナは、群像達の援護により消滅の危機を間一髪乗り越え、閉じられたサロンを押し開いてコンゴウを救う・・・と言う結末です・・・。

全12話の最終話だけにこれまでの総括的な場面も多くなります。目に付いたところから上げていくと・・・。

まず、圧倒的なコンゴウの力を目にして追い詰められた401クルー達は、これまでの来し方を振り返り、自分たちの「覚悟」を改めて思い起こします。

「俺たちは閉鎖された世界に風穴を開ける為に戦いを始めたんだ。誰かを待つんじゃない・・自分達が始めないと・・・世界は変わらない・・・。俺たちは止まる訳にはいかない・・・」と群像が・・・。

そして、メンタルモデル達も、「コンゴウを救いたい」というイオナの言葉から、様々な「思い」・・・自分たちの「意志」について考えます・・・。

「コンゴウは・・・傷ついている・・・」(イオナ)
「現状では無傷だが・・・」(キリシマ)
「心が・・・」(イオナ)
「それは存在を証明できないもの・・・」(ハルナ)
「なんで・・・こんな面倒な思考ルーチンになってしまったんだ・・・?」(キリシマ)
「私たちは兵器じゃなかったの・・・?」(タカオ)

「何かだった・・・ではなく、今、自分が何者か?・・・・と言う事だ・・・」(群像)

「今、自分が何者か・・・?」(ハルナ)
「私は・・・救いたい・・・コンゴウを・・・戦う理由が無い・・・。何より、演算処理を超えた「衝動」が、私を突き動かしている・・・。群像・・・これが「意志」?」(イオナ)
「意志・・!」(ヒュウガ)
「意志・・・?」(ハルナ)
「意志・・・!」(タカオ)
「イオナ・・・コンゴウを救えるか?」(群像)
「群像・・・私に命令して!」
「イオナ・・・君はこれより、旗艦コンゴウのメンタルモデルコアに物理接触、彼女の暴走を止めるんだ!」
「了解!」

メンタルモデル達が自分たちの「存在理由」「自己の確立」を意識した場面です。「霧」の「兵器」から「意志持つ者」へ・・・群像達の「覚悟」とは別次元の感覚ながら、「思考ルーチンの変化」と言うより「進化」の証と言うべきしょう。「意志を持って行動する・・・」この物語のメッセージがここまでで言い尽くされていますね・・・。

そして、残されたのはコンゴウです。

初見時、「ラスボス」コンゴウが「救われる」と言う展開の「意味」が腑に落ちなかったと言うのが正直なところですが、これまで見てきた様な、メンタルモデ ル達の「心の軌跡」を辿った上での結果としては納得がいきます・・・。

「アドミラリティコードとコンゴウに従うだけ」と言っていたマヤを失い、401への固執が故に「霧」本体からも見捨てられて幽鬼と化したコンゴウは、初めて知った「怒り」と「悲しみ」の暴走・・・荒れ狂う「感情」と言う「意志」のやり場に戸惑い、翻弄されながら、氷の刃を振るってイオナを追い詰める。自分も含めて「エラー」と言い切ったコンゴウは超重力砲によって全てを「清算」しようとするが、「死」と「喜び」と「悲しみ」を知り、自らの「意志」を貫こうとするイオナによって救われます・・・。

ここで分かるのは、コンゴウが単なる「悪役」ではなく、艦隊旗艦としての「役割」を背負って「兵器」の本分にこだわり、拠り所としたアドミラリティコード にがんじがらめになっていたと言う事であり、イオナ達との接触を通して芽生えた自らの「意志」の存在を認めることができずに苦しんでいたと言う事。

イオナと戦いながらコンンゴウは叫びます!

「この思考を乱す苦痛は何だ!?自分の中からあふれ出す、怒りや悲しみに押しつぶされそうだ!」「何故だ!?何故今のままではいけないのだ?!変化などいらない!関系などいらない!私は一人で良かったのだ!世界 等・・・認識したくなかったのに!!・・・何故・・?」

コンゴウが頻繁に口にした「面倒くさい」という言葉の裏側に、この様な「葛藤」があったと言う事でしょう。イオナとの直接対決によって彼女の中の「本音」が露わになった・・・。

そして、意志の力によって危機を乗り切ったイオナは、遂にサロンを解放し、打ちひしがれ、涙にくれるコンゴウを優しく抱きしめて・・・コンゴウの「心」を・・・「檻」から解き放つ・・・。。

「もう大丈夫・・・。繋がれば・・・ 分かり合えれば・・・もう怯えなくて良い・・・。そうしたら・・・友達になれる・・・」

全てが終わり、甲板上で手と手を触れあったまま、コンゴウが尋ねイオナが答える・・・。

「401・・・お前は何を規範に存在しているのだ?」

「自分の・・・意志・・・」

「そうか・・・ありがとう・・・」

柔らかなコンゴウの言葉・・・暗い紫色が清明な青に変わる・・・美しいラストです・・・。あえて言えば、コンゴウが「ありがとう」と言う言葉を知っていたのか?口にする時を誰が想像できたか?(笑)と言うほどの「超進化」ですが、イオナのもたらした「心の平安」がもたらした自然な帰結ということかな?「言葉は始原」から始まったメンタルモデル達の進化の帰結で・・・「ありがとう」こそ、「人間らしさ」を表す究極の言葉と言う事なのでしょう。

コンゴウの苦しみ・・・これらの会話を通しても分かりますが、言葉ではなく細かな描写で分かる部分もあります。まずは以前にも書いた「氷の刃」、そして荒れ果てたサロンに放置されたマヤのピアノ、戦いながら一瞬だけ見せたコンゴウの涙・・・。

「強さ」ではなく、心のもたらす「温もり」に対抗できない「氷の刃」は、頑ななコンゴウの心を表し、ピアノは、失われてしまった「友達」への追慕の表れでしょう。そもそも「兵器」にとって「音楽」は「不要」と分かっていながら、マヤのそれを許したのは何故か?頑なさの裏返しなのは確かかと思う。マヤが「人形」でしかなかったと分かっても、存在の記憶は消せず、自分が、霧という「存在」、文字通りの「人形の家」・・・「檻」に囚われていたと知る事になるきっかけと言えま す。そして、戦いながらも流れ出す涙は、救いを求めるコンゴウの「心」の発露でしょう・・・。

「ありがとう・・・」コンゴウの言葉には万感の思いがこもっています・・・。

いまだ原作未読の私には良く分かりませんが、メンタルモデルの導入というのは「霧」の壮大な「実験」だったのかな?だとしたら、この結果をもって「実験」は 「失敗」したと言える面もあるのだろうが、「人類」に対する「霧」の「評価」が変わる側面もありそうに思える。「敵対する存在」から「別の物」になる可能 性の「芽」・・・霧の「評価」と「次の一手」が興味深い・・・。

さて、全話の最後・・・静かなエンディングでは、スタッフロールと共にその後の「蒼き鋼」の姿が見られます。

サンディエゴ港入港と振動弾頭引き渡しセレモニー。硫黄島でのタカオ復活!サンディエゴに留まった蒔絵とハルハル、そしてキリクマ!(笑)マヤのピアノの前で一人物思いにふけるコンゴウと・・・新たな航海に向かう401・・・群像とイオナ・・・。

う〜ん・・・実に丁寧な心理描写の数々・・・驚くべき作品です・・・!

全12話を通して描かれたのは「自ら考え、意志を持って行動せよ!」「会話と触れ合いを通して理解し合い、友となれ!」と言うメッセージでしょう。大事なのはこれらは車の両輪であり、両方揃って初めて、明るい未来への展望が開けると言う事!

「霧」と言う存在は無くとも、日々閉塞感を強めつつある21世紀の現実世界・・・その世界に生きる我々にとって、実に示唆に富んだテーマではありませんか?只のアニメに収まらない作品として、世界中の人々に見て欲しいものです・・・。


最後に、こんな作品を生み出してくれた原作者、制作陣に感謝申し上げます!

ありがとう・・・・。

って・・・あれ・・・共感しちゃってる?(笑)

う〜ん・・・コンゴウって今の自分たちに似ているんですよね・・・。

次に会う時は、彼女の素敵なピアノを聞かせて欲しい・・・。

空気振動によって感性を刺激する物理現象・・・「音楽」を彼女はどのように分析するのか興味深いぞ。(笑)

我々はどこから来たのか?我々はどこへ行くのか?我々は何者なのか?

旅は続く・・・。





2024.03.17 Sunday

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22:43 | - | - | - | - | - |

コメント

HINAKAです。

雪太郎様

敢えて意地悪く言うならば、この物語の成功の1つは、フルCGアニメという制約もあった為か、極端にキャラクターが少ない。
しかも、特に敵キャラがイオナの姉妹イ400型の二人を含めても、実質真の敵と成り得るのは、コンゴウ様を含めこの3人だけに絞られた事。更に、味方もイオナ以外にはほとんど活躍や影響力のある発言の場面もなく、むしろ寝返り組のキリクマやハルナ達の方に、明らかに比重が掛かっていました。
しかも好都合?な事に、この人達はほとんど一度登場すると、同じ場所に固まる?習性がある?上に、メンタルモデルだから、表情変化に乏しくて当然!い理屈が成り立ちます。しかも、場面移動がほとんどありません。

その結果、キャラクター達には微細な動きと、声の演技で見せて貰い、派手な作画は戦闘シーンに集中して使えるという、裏技的なメリットが生まれました。
制作秘話的には、「絶対に無理!」という製作会社を「こうすれば可能」と悪魔が囁いたようです。ですが、場所と時間とキャラの限定は、物語を面白く見せる効果的な古典的方法です。

結果として、人間VS霧の戦いと言うよりは、兵器としての霧(機械と言わないと頃がポイントでしょう)の葛藤と成長の物語。
ある意味で言えば、壮大な姉妹喧嘩?末っ子が、最後に頑固な長女にガツンと喰らわせた!という感じかも知れません。

ハルナ達が横須賀を攻撃した時に、多くの兵士を巻き添えにしていますが、実際に彼女達や群像達が、直接殺し合う場面もない事が、何と清々しい事か!
マァ、そのせいで雑魚キャラ代表の「ナガラ級」が数だけは盛大に出て、敵味方双方から片端からやられると言う、作品を見ないと冗談では済まない状況が生まれています。

霧の北米艦体は、影も形も見えない内に、一瞬でやられてしまいますすし‥‥‥。
敢えて付け加えるなら、やはり声優の演技力というモノの力を、改めて思い知った気がします。

http://aonow.blog.fc2.com/blog-entry-610.html

最後の方にチラリと、この最終回に触れていますので。

では、また。

2014/08/22 10:24 PM by HINAKA
HINAKAさん毎度。

>悪魔が囁いた

悪魔がいるからこそ天の輝きが引き立つ訳で・・・。(笑)

>場所と時間とキャラの限定は、物語を面白く見せる効果的な古典的方法

広い視野から見る目が無いので、このような総括がいただけるとありがたいですね。いちいちなるほどです。

いまだ原作未読(見る価値があるかどうか不安)なので何とも言えませんが、スピンアウトとして展開する事を決めた時点で、ある程度の成功は見えていたのかな?起承転結の構成が見事に決まっています。

要素をそぎ落としたことが、結果的に作画の負担を減らすと言う事までは想像もできませんでしたが、ビジネス的には最も重要になるのも現実なのでしょうね。

続編が決まっているようですが、新たな展開を楽しみに待ちましょう。
2014/08/23 8:17 AM by 雪太郎

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