2009.08.27 Thursday
誉田 哲也「武士道エイティーン」
さて、出ましたシリーズ第3巻です!多分・・最終巻?
イラストは長崎訓子氏。今まで通りのスッキリしたものですが、扉を開いたところにはTシャツとジーパン姿の香織と、フワフワドレス?姿の早苗のイラストもあります。栞代わりの紐も紅白2本です。
現代の女子高生と「武士道」という異例の組み合わせを描いたこのシリーズですが、主人公たちも3年生となり、最後の夏、そして「その先」について、色々な面からお話をまとめる展開となりました。
『高校時代を剣道にかける、またとない好敵手。最後の夏、ふたりの決戦のとき。新進気鋭が放つ痛快・青春エンターテインメント、いよいよ天王山!わたしたちは、もう迷わない。この道をゆくと、決めたのだから。』
(〜amazon)
「武士道シックスティーン」「武士道セブンティーン」と読んできて、これが最後?の1冊、となると、ちょっと期待するところが有るわけですが、お話が素直に展開していくか?と言うとこれが大違いで、面食らってしまった・・・と言うのが正直なところです。
まず目次からして尋常でない!(笑)
数字がついてるのが13章あるのですが、所々に4編ほどの番号のついていない手書きの文字で書かれた章がある。どうやらそれらは文藝春秋ウェブ「パンセ」上で昨年末から半年ほどの間に発表されていた作品で、サイド・ストーリーという感じのものらしい。そして、それ以外の番号付きが書き下ろしですね。
さて、出だしは・・・一方の主人公「ほとんど男」の磯山香織の、試合会場における「ほとんど男」の独白が続く。(笑)ま、この辺はいつも通りなのですが・・・久しぶりに読んだ為か?やたらと「乱暴」で「ぎこちない」ものを感じ・・・悪く言うと「雑」と言う事に・・・。
大丈夫かな〜??と案じながら読み進むのですが・・・・。(汗)
前の2巻でも同様でしたが、今回も章毎に語り手が変わります。そして・・・サイド・ストーリーの部分では・・・今まで、いわゆる「脇役」だった登場人物が語ります。
これが・・・実は・・・凄いのです!
早苗の姉、緑子の・・・切なく・・・泣ける話・・・。
桐谷道場の・・・隠された・・・恐ろしくも切実な真実!(立ち読みした本を思い出した・・・。)
いつも酒臭〜い!早苗の顧問、吉野先生の18歳の頃の・・・凄まじくも・・・泣ける話・・・。
そして・・・香織の後輩田原の、言うに言えなかった孤独な戦い・・・。
基本的には主人公二人の泣き笑いがメインですが、彼女たちを取り巻くこれらの人々それぞれの物語も大変読みごたえがあります。中には、運命的な「出会い」や、あっと驚く「真相」が描かれている部分もあって、作者の手腕に唸ります!
そして、それぞれ単独でも凄いお話が全体の進行に合わせて展開していくのですが、その結果として、この物語が、香織と早苗の二人だけのものではなく、多くの、「剣道」あるいは「武士道」の道を歩く者たちに共通する苦しさ、切なさ、素晴らしさを語っているのだな、と分かって来ます・・・。
剣道経験者には分かるかと思いますが・・・防具を着けることで自分の正面だけを見据える事になり、そして、基本的には、相手に対して真っ正直に切り込ん行くしかないのが剣道です。長年に亘って身についたそれは、防具を外しても現れてしまい・・・ぶきっちょで、馬鹿正直な生き方しかできなくなる・・・。
そうです。このお話に登場する人物全てが、それぞれにそんな生き方をして、悩み、苦しみ、泣き、笑っているのですね。それが分かってくるに従って・・・何と味わい深い物語・・・と思えてくるのです・・・。
結末は・・・明日を思い・・・未来を思い、互いに相手を思いやりながらも・・・やはり一緒に剣の道を・・・一生続くこの道を共に歩きたい・・・二人の、そんな思いがあふれる切ない会話で終わります。
最初はちょっと面食らいますが読み進む内に引きこまれ、最後はしっとりとした情感に包まれて読了できました。全体の構成に??と感じる部分がない訳ではありませんが、誉田 哲也って凄い作家だ・・・そんな風に実感できる作品です。
多分完結????読んでない方には3冊まとめてお薦めしましょう。
でも・・・武士道20でも30でも・・・書けると思いますよね・・・なにしろ、武士道の道は・・・死ぬまで続くんだから・・・。
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