雪太郎のつぶやき、あるいはプリンセス達の花園

あ〜!!おじさんなのに、「プリンセス・プリンセス」に嵌ってしまった〜〜!!(笑)
美しいもの、面白いもの、切ないもの、考えさせる物・・・。一人が好きだけど、独りじゃ寂しい。そんな私のつぶやき・・・・。ちょっとキモイかもね〜。
クラシック音楽が苦手な人にはお薦めできません。暗いのが嫌いな人にはお薦めできません!!お子様にもお薦めできません!!
[謝辞]
父と母に、家族に、多くの慰めと喜びを与えてくれた、過去、現在、そして未来の芸術家達に、感謝!!
[おことわり]
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2016.04.23 Saturday

村山早紀「コンビニたそがれ堂 セレクション」

 本編5編(2010年から2013年にかけて刊行されてきたポプラ社の文庫本からのセレクション4編+書下ろし1編)にエピローグと創作メモを収めたハードカバーの愛蔵版です。表紙は写真にボタニカル調?のイラストを重ね、月と蜘蛛の巣は金の箔押しという凝ったデザイン。中の挿絵(佐々木ひとみさん?)も控え目で好感を持てるし、何より文字のフォントやサイズ、クッキリとした印字が良い。紙媒体の存在意義を具現化したとも言える出来の良さです。

これも「竜宮ホテル」と同様に、書名からの印象でお手軽な子供向け読み物かと思って手を出しかねていたのですが、読んでみてビックリ!ルリユールの・・・コンビニ版ですね。(笑)

『かけがえのない明日が、遙かな思い出の空から聞こえてくる。ひとり胸に秘めた記憶を包みなおしてくれるお店、「コンビニたそがれ堂」。心に灯がともる、人と時間の不思議な物語。 』
(〜amazon)

1、あんず
2、人魚姫
3、星に願いを
4、天使の絵本
5、花明りの夜に
6、エピローグ 風早の伝説
7、創作メモ 〜後書きにかえて

舞台はお馴染みの風早の街。背景説明を兼ねた2ページのプロローグに続いて、時間も登場人物も全く異なるストーリーが展開されていきます。猫とお兄ちゃんの「溢れる感謝の物語」。引きこもり少女の恐ろしくも感動的な「再生の物語」。過去の失敗を悔やむ医師が絶体絶命のピンチで経験する「命の絆の物語」・・・等々、バラエティーに富んだ作品が揃っています。

元々が児童向け文学から始めた作者らしく、かなり個性的な語り口で、純文学ばかり読んできた方には面食らう表現の部分もあります。どうも・・・ひらがなが多い・・・ラノベ風の軽い表現が多い・・・と言うような文章作法の面から、猫が使うのは・・・手じゃなくて足だよね(笑)・・・御稲荷さんがX'masってどうよ・・・BlackBerryって、こんな旧い携帯、今時の人は知らないでしょ!(でも黒電話は停電時も使えると知っている!)なんて些末な事もあちこちにありますが、読み進むうちにはどうでも良くなって・・・実に濃密な描写、思いもよらない展開の連続に・・・気が付くと・・・圧倒されていました。(汗)

いやはや凄い本です。普通だったらこの辺で終わり・・・あるいはこれでは話がまとまらない!!空中分解だ!と思ったその先が用意されていて、優しい微笑みに満ちた結末が待ち構えているという素晴らしい構成の作品ばかり・・・。

特に驚いたのは書下ろしの新作である「天使の絵本」。荒涼とした戦後の焼け跡で、生きるためには手段を選んでいる余裕も無くなり荒み切った日々を送る主人公の少年の、偶然過ごした一夜とその後日談です。思わずチャップリンの「ライムライト」やディケンズの「クリスマスキャロル」を彷彿とさせるような文字通りの「聖夜の物語」は香気溢れる傑作で、ドラマ化や映画化を期待したい出来ですね!

シェーラ姫やマリリン、ルルーの物語を一緒に読んできた娘達も独立し、しばらく読む機会が減っていた作者の作品ですが、いつの間にか「大人向き」の小説が多数出版される作家に成長していたようですので、改めて近年の作品を読んでみようかと思います。いわゆる「普通」の作家とは一味違う、異彩を放つ作風・・・イリュージョン系ファンタジー作家の今後は、多いに期待できそうですね。

それにしてもこの本・・・装丁もそうですが、内容的にもクリスマスプレゼントにピッタリです!こんな本を受け取る側はもちろんですが送る側も・・・きっと幸福感に包まれます・・・。

ですから・・・誰か私にプレゼントしてくれないかな?(笑)雪



 

2016.04.10 Sunday

村山早紀「竜宮ホテル」(徳間文庫)

久しぶりに村山早紀の小説を読んでみました。Twiiterのタイムラインでしょっちゅう見るけれど、書名でや表紙のイラストから閃くのは・・・子供向け???(笑)子供が小さい頃から一緒にほとんどの作品を読んできていますが、さすがに最近はちょっと・・・と、敬遠していました・・・。。(汗)

『あやかしをみる不思議な瞳を持つ作家水守響呼は、その能力ゆえに世界に心を閉ざし、孤独に生きてきた。ある雨の夜、妹を捜してひとの街を訪れた妖怪の少女 を救ったことをきっかけに、クラシックホテル『竜宮ホテル』で暮らすことに。紫陽花が咲き乱れ南国の木々が葉をそよがせるそのホテルでの日々は魔法と奇跡 に彩られて…。美しい癒しと再生の物語!書下し「旅の猫 風の翼」を収録。 』
(〜amazon)

3話に番外編を加えた全4話ですが、それぞれ連続したお話なので全体での読後感はとても濃密。作者の自伝的部分も少しはあるのか?主人公が売れっ子作家なのに、第一話はとても暗いお話で面食らう。理由のある「孤独」を選ばざるを得なかった彼女が、話が進むうち笑顔を見せるようになるというのが全体のストーリーです。、

いつものように文章的にかなり乱暴な部分もあるけれど、言ってみれば魅力的な人物のタメ口みたいなものか?読み進むうちに独特の「語り口」となって気にならなくなるが凄い。(笑)

猫耳に黒い尻尾・・・妖怪少女から、はかなげな未来の少年(名前は違うが黄金旋律の主人公か?)・・・その他多彩な登場人物が古いホテルを舞台にして触れ合ううちに、それぞれの苦しみや悲しみが喜びに昇華していく情景はいつもながら素晴らしく、これでもかと繰り出される奇手の連続には唖然とされられながらも次第に湧き上がる人肌の温もりが心地よいお話になってます。かなり跳んでる所もあって、一言で言ったら「ハイパー・イリュージョン・ファンタジー」小説ですね。(笑)

全4話それぞれに良いが、中でも亡き父親に対する想いの部分は他人事ではなくて切なかった。携帯型タイムマシン・・・あんなものがあったら私にも会いたい人が・・・話したい言葉があります・・・。

続編もあるらしいし・・・見た目で迷っている人もどうぞ。雪




 

2015.11.22 Sunday

杉本 貴司 「大空に賭けた男たち ホンダジェット誕生物語」

大空に賭けた男たち ホンダジェット誕生物語

折しもMRJが初飛行を成功させて日本中が沸いたところですが、半年ほど前には小さな小さなハチドリ風の小型機が日本中を飛び回って話題になっていました。

それがこの本で取り上げられているホンダジェットでした。


『「家族にも極秘」を指示され、和光研究所の一室で研究が始まってから約30年。実際に本物の翼やエンジンを作った経験は皆無というエンジニアたちが、専門 書を頼りに開発を始めた。まさに手探りだった。ホンダはなぜ空を目指したのか。高い壁をどう乗り越えたのか。本田宗一郎が生涯の夢として参入を宣言してか ら半世紀。二輪車メーカーとして出発したホンダが、ジェット機参入という壮大な野望を実現させた過程をひもとく。青山の本社から「金食い虫」と陰口をたた かれながらも、ついにホンダジェットを創り上げた若きエンジニアたちの苦闘を克明に描く。 』
(〜amazon)

ホンダと言う会社は、今でこそ世界企業として存在していますが、良く知られている通り戦後復興期の創業時は名もなき地方の町工場?から始まっています。この本では、創業者である本田宗一郎の、子供時代の衝撃的な「飛行機」との出会いから、その後の成功と挫折、そして「本業」となってしまった四輪車開発の傍らで細々と続けられた「飛行機」開発、1962年(昭和37年)に本田宗一郎が航空機事業への参入を宣言してからの文字通り「死屍累々」の50年が描かれています。

発行元が日経ですからいわゆる「ビジネス書」に当たる訳ですが、基本的にはその時々の若きリーダー達の目線で書かれているので堅苦しさは無くとても読みやすい。当然、社史そのままの部分もありますが、ほとんどは「暗中模索」と「絶体絶命」の連続と言う大変ドラマチックな描写が多くて読ませます。

印象的なのは「独創性」に拘るカリスマリーダーと、理詰めで事を進めようとする(特にジェットエンジンは数式の塊!?)若手との「確執」を通してホンダという「革新を運命付けられた会社の苦しさ」を描いている事ですね。創業者も含めてその時々のリーダーが「呪縛」から逃れらず、起死回生の「力技」に頼ろうとして失敗を重ねる様子や、そんな人たちが最後には若い世代に道を譲らなければならなくなる場面を通して現代のおける様々なリーダー像が描かれていきます。本田宗一郎の決断の場面や病に倒れた元リーダーの最期の場面など・・・ちょっとグッと来ます・・・。

もう一つ印象的なのは、ホンダジェットの成功の大きな要因の一つが「HONDA」という会社に対する、米国人ファンの存在があったと言う事です。他に類を見ない「独創的」なジェット機として完成を見たこの機体も、実は米国内での「お披露目飛行」がプロジェクトの「終わりと決まっていた」のに、多くのファンの声によって復活がかなって遂には量産メーカーとしての道が開けたそうです。はっきり言って、日本ではありえない展開が実際にあったのは驚き以外の何物でもありません。


失意の底に沈んでいたリーダーと、旅先でたまたま出会って「必ず買う」と約束したアメリカ人が、3年後の初めての商談会の場で握手を交わす場面など、何度読んでも感動ものです!

あえて「呪縛」と言った「HONDAスピリッツ」が多くのファンを生み、その存在によってホンダジェットが救われたというアメリカンドリームそのもののような事実は、1968年7月のF1フランスグランプリで、本田宗一郎が固執した空冷式エンジン搭載車RA302に乗って死亡したジョー・シュレッサーというドライバーの存在や、この本の中に登場する多くの技術者達の存在と共に記憶するべきでしょう。

ちょっと残念なのは、内容的にはエンジン開発が主で、機体に関しては独創的なエンジンの配置に関するエピソード以外は特に書かれていない事と、日本企業との係わりもほとんど無い事です。

自家用機ですが、時価5億円を超える?高額商品ですから、この日本と言う国ではビジネスとして成り立ちそうもなく、最終的にエンジンはGEとの合弁会社、機体の組立と販売は米国法人のホンダエアクラフトカンパニーが担当しているようです。すそ野が広い飛行機産業とはいっても、開発は別として今のところ本田本体が手掛けることは無さそうで、日本企業の関与も少なそう・・・。以前放送されたTVのドキュメンタリー番組やこの作中でも、主脚?の製造を手掛ける日本企業が紹介されていただけで、ちょっと寂しいですね。

とは言え、やはり世界のHONDAです。昨年来のリコール問題や散々だった今季F1での成績など、課題が山積しているのは事実の様ですが、御役人様方の不慣れもあって?悪戦苦闘中のMRJに対して、軽やかなハチドリの飛翔は心浮き立つものがあります。米航空当局の型式認定もほぼ完了し、年内にも納入が始まるそうです。停滞する地上を尻目にどこまで飛べるか・・・見ていたいですね。


 

2015.10.25 Sunday

村山 早紀「花咲家の旅」

しばらく前に図書館で借りていたのですが、なかなか読めず、期限が切れてしまったので慌てて読了!(汗)

『つかの間千草苑を離れ、亡き妻との思い出のある地へと旅立つ祖父の木太郎。黄昏時、波打ち際に佇む彼に囁きかけるものは(「浜辺にて」)。若さ故の迷いか ら、将来を見失ったりら子が、古い楠の群れに守られた山で、奇妙な運命を辿った親戚と出会う(「鎮守の森」)。ひとと花。緑たちの思いが交錯する物語。花 咲家のひとびとが存在するとき、そこに優しい奇跡が起きる。書下し連作短篇全六話。』
〜amazon

短編六話の内容は・・・。

第一話「浜辺にて」
第二話「葦の家」
第三話「潮騒浪漫」
第四話「鎮守の森」
第五話「空を行く羽」
第六話「Good Luck」

プロローグにお馴染みの「語り」があり、連続ドラマの雰囲気を醸し出してくれます。シリーズ全体としてのまとまりを意識していますね。

細かい内容は読んでのお楽しみですが、四話以降は特にお薦めです!前半三作ではちょっと「突飛」と感じる部分があるのですが、後半三作は無理のない運びで素晴らしい!

ある意味「イリュージョン系ファンタジー作家」と言いたい位の作者の才能ですが、大人向けの「落ち着いた展開」を期待すると気になる部分が少なからずあります。若い読者には「飛んでる作家」として受ける部分でもあるでしょうが、長く読まれる「普遍性を備えた名作」と呼ぶには難しい部分と感じます。

それを作者が課題として意識しているのかいないのか、あるいは、編集者も含めて「それこそ長所」と思っているのかも知れませんが、惜しい!と思います。

柔らかくて優しい空気に包まれていると思ったら、気が付くと世界が変わっていた!

優しいけれどどこか哀しい世界を垣間見た刹那を、情感あふれる筆致で味あわせてくれる・・・。

そんな得難い体験ができる作品ですね。雪



 

2015.08.02 Sunday

野村 美月 「下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。」

しばらく前の新聞で紹介されていた本ですが、久しぶりに寄ったツタヤで見つけて買ってみました。置き場所に困るので本を買うのも久しぶりです。(笑)

「平凡な高校生の青は、実はラノベ新人賞の下読みのエキスパートだ。そんな彼は、ある日応募原稿の中に、同じクラスの氷ノ宮氷雪の作品を見つける。"氷の淑女"と呼ばれる孤高の少女が、フォント変えや顔文字だらけのラノベを書いて投稿している!?

驚く青だが、その後ひょんなことから彼女の投稿作にアドバイスをすることに。評価シートに傷つく氷雪をあたたかく導き、世界観、キャラ設定、プロットと、順調に進んでいくが……。

爽やかな青春創作ストーリー! 」
(〜amazon)

「下読み」という仕事があるとは知りませんでしたが、考えてみればあって当然の「仕事」ですね。文学賞などの膨大な数の応募作品を読んで最初の「ふるいをかける」・・・場合によってはとても怖い仕事です・・・。

主人公の少年はそんな仕事を嬉々としてこなしていたが、同級生の美少女の応募作を読んでラノベ大好きという彼女の真の姿を知って驚く。当然のことながら「秘密厳守」という建前に苦悶しながらも偶然も重なって作品造りのアドバイスをすることになり、二ヵ月限定で放課後のひと時を過ごす内に、二人の関係が徐々に変わっていく・・・。

文章作法的なノウハウも語られますが、主役が若い二人ですから当然「ラブ・ストーリー」に発展する訳で、少女の生い立ちや家庭環境の故の「人嫌い」と思われた性格が、少年との係わりを通して人間らしい感情表現を取り戻していく様子が生き生きと描かれます。

「ファミ通文庫」ですから当然ですが、ラノベというくくりの中では異色の「文系爽やか小説」としてお薦めです。

ただし・・・内容的に「くくり」に収まらない部分が当然ある訳で、少々広い目線で読んでみるとちょっと気になる部分も出てきます。伏線の張り方やその「種明かし」が大げさ?少女の外観や性格描写が極端?日常の情景描写も何だかドライ?・・・等々、作中で語られる文章指南の目線が頭をもたげてきて気にかかる部分も・・・全体の情感に配慮して見直せばぐっと良くなりそうな部分が目に付いてきます・・・。

ひょっとして作者は「墓穴」を掘ったのかも知れませんが、そんな危険を冒してでも書きたかったお話とも言えます。

という風に、気にしなければ気にならないレベルですが、全体を通して軽い感触がつきまとうこともあって「深さ」を求めると肩透かしを食らうでしょうから、あくまでも、「上質なラノベ」として楽しみましょう。

この作品の意義は、作品自体の完成度よりは、「下読み」という仕事に光を当て、世の無数の投稿者及び予備軍、未来の大作家達に希望を与えたという面もあるかな?

当然ですが、作者の今後にも期待しましょう。

2014.11.08 Saturday

村山早紀 「花咲家の人々」[花崎家の休日」(徳間文庫)

ここのところ続いていた仕事(書類を見て粗さがし!)が一段落・・・久しぶりに読書などしてみました・・・。

読んだのは村山早紀の「花崎家」シリーズです。現在、徳間文庫から二巻まで出ていて、第一巻は2012年12月刊、第二巻は今年の9月刊です。字が小さな文庫本は敬遠しがちなのですが、最近ツイッター上で良く見かけるので読んでみました。

娘達が小さな頃からこの人の本はよく読んできているのですが、同じように読んできた他の作家さんの作品を読む機会がここ数年ほとんど無くなっている中で、少ないながらいまだに読み続けていられるという貴重な・・・ありがたい存在ですね。

徳間文庫の書き下ろしなのに、今までの作品でお馴染みの「風早の街」が舞台。新しい登場人物による新しい物語で、特に児童書とも謳っていないので普通のエンタメ小説になるのかも知れませんが、読んでみると分かるようにロマンチック・ファンタジー小説と言う奮雰囲気が濃厚です。次の文は第一巻の紹介ですが、一部を除いて二巻とも通用する内容です。

『風早の街で戦前から続く老舗の花屋「千草苑」。経営者一族の花咲家は、先祖代々植物と会話ができる魔法のような力を持っている。併設されたカフェで働く美 人の長姉、茉莉亜。能力の存在は認めるも現実主義な次姉、りら子。魔法は使えないけれども読書好きで夢見がちな末弟、桂。三人はそれぞれに悩みつつも周囲 の優しさに包まれ成長していく』
〜amazon

さてまずは第一巻(全四章、第二巻は全七章)を読んでみると・・・正直に言いますが、最初はかなり戸惑いました。

村山さんの作品の特徴としては、優しく丁寧な筆致でつづっていきながら、読み進むうちに予想外とも思えるファンタジックな展開で引きこまれる・・・というところなのですが、この本・・・第一章を読み始めた途端に、何だか変?出来が悪い???と感じてしまいました。(汗)

風早の町に『高層のビル』?『この家の人々は魔法を使うと、先祖は神仙あやかしの血を引くものやも知れぬと、恐れられ敬われていた』って・・・どうも大げさと言うかチグハグ・・・。『館を猛火から守ろうとしたという薔薇たち金木犀は、』って・・・「に」で良いの???・・・とか、風邪で「急死」と言いながらあらかじめ死期を悟ったような母親の言葉って・・・とか、漢字とひらがなの使い分け、句読点の使い方等も含めて微妙〜な部分の書き方や、ちょっと「唐突な話の展開」に首をひねるような部分が目に付きます・・・。

どうしたんだろう・・・と思いながらも、ファンですから読み進みます!(笑)

第2章・・・最初はちょっと大雑把と感じる部分がありますが、後半から調子が良くなって・・以後は最後まで一気読み!4章それぞれに花咲家の人々が関わってお話が広がって行き最後には感動的な大団円を迎えという展開に・・・。

安心しました・・・(笑)

読了して全体を振り返ると・・・。

幼くして母親を失った少年の切ない思い、そんな弟に表面上はきつく当たりながらも、実は同じように感 じている自分を素直に表せない姉二人・・・子供たちを優しく見守る父親と秘めた過去を持つ祖父・・・。花の言葉が分かると言う不思議な一族、それぞれ の思いが、「クリスマスの奇跡」に向かって重なり合っていく様が、個性的な風早の街の住民との係わりも含めて感動的に描かれている・・・という充実した展開です。

ここで、第1章の違和感は何故??と思って考えてみると、どうも登場人物のキャラクターも関係しているのかな?結構乱暴な次女、長女との辛辣な会話もあって今までとは雰囲気が違います。それに対して後半のメインとなる登場人物は一族の最年少、小5の男の子でとても繊細な性格。そのエピソードを丁寧に描写しているので読んでいてもホロリとさせられます。自分の子供の頃を思い出した部分もありそうですが、以外と・・・仕事で使った「粗さがし目線」が残っていたのかもしれないな・・・?(汗)

念のため第1章は2回読んでみました。すると・・・するすると読めて「乱暴な展開」もあまり気になりません・・・これは・・・やっぱり仕事のせいかな・・・?(笑)今までの作品の延長戦上の雰囲気を期待して読むと面食らう、ということのようにも思えます。

ま、新しい「一般向け小説」と言う事で、大人目線の書き方を「試した」と言う事もあるかも知れませんし、出版社の意向や作家の考えと言う事もあるでしょうからとやかく言う事はできませんが、後半の盛り上がりはやはり村山ワールド全開で流石です!結果として村山早紀らしい作品となっています。

これはやはり・・・心温まる癒し系ファンタジー小説ですね!

続けて第二巻も読んでみましたが、こちらはプロローグとエピローグ+五章=全七章の構成です。第一巻で紹介された一族それぞれの、第一巻から『一年後の夏の物語』・・・。

『勤め先の植物園がお休みの朝、花咲家のお父さん草太郎は自らの少年時代を思い起こしていました。自分の耳には植物の声が聞こえる。その「秘密」を抱え周囲 の「普通」の友人たちとは距離をおいてきた日々。なのにその不思議な転校生には心を開いた…。月夜に少女の姿の死神を見た次女のりら子、日本狼を夢見、探 そうとする末っ子の桂、見事な琉球朝顔を咲かせる家を訪う祖父木太郎。家族それぞれの休日が永遠に心に芽吹く、シリーズ第二弾!! 』
〜amazon

不思議な転校生、月夜の死神、未来からの使者、子猫の恩返し、大切な思いを忘れない朝顔・・・第一巻の様な結末に向かって収斂していく展開ではないのですが、さまざまな出会いを通して描かれるお話の数々はひたすら優しく暖かい・・・。第1巻に比べるとちょっと「小ぶり」なお話が多いですが、この作者ならではの作品ばかりであり充実したひと時が過ごせました。

初めてこの作家の作品に触れる人、「普通の小説」を期待する人にとっては、次々に繰り広げられる「イリュージョン」の数々に思わず目が白黒かも知れませんし、正直勿体ない!とも思えるのですが、それこそこの作者の真骨頂と言えますね!





2013.12.23 Monday

村山 早紀「ルリユール」

久しぶりに・・・本当に久しぶりに本について投稿・・・。

休みの日も仕事を持ち帰っているような生活の中では本を手にする事さえ億劫でしたが、ここにきてちょっと余裕ができてきたので・・・よくよく見たら・・・2年近く間が・・・。(大汗)

手工芸的な製本技術をフランス語ではルリユールと言い、Wikipediaによると

「西洋には製本を手作業で工芸的に行なう伝統があり、一般にルリユール(フランス語)と呼ばれる山羊仔牛の革を貼り、さまざまな装飾を加えて美しく飾り立てる工芸的な製本で、昔は職人が行なっていたが、現在は趣味のひとつとしても楽しまれている。ルリユール作家も世界中にいる。」

と言う事です(一部のみ)。

久しぶりに読んだ村山早紀の作品・・・優雅な趣も感じられる書名の本ですが、文字通りちょっと不思議で、ちょっと優雅で、それでいてとても切実な優しさに溢れた作品となっていました。過去の作品で登場した町が舞台ですが、あいにくその辺は未読のため詳細不明です・・・あしからず・・・。

冒頭からきめ細かい描写が続き引き込まれます。登場人物の表情、足元や周囲の光景、風の匂いから湿り気、光の移ろいまでが感じ られ、物語世界が具体的なイメージを持って迫ってきます。そして、そんな徹底したリアルな描写が続くのに、同時に、優しい手触りや温もりが感じられる村山早紀ワールドが 展開されていく様は見事ですね。

目次を見ると全体は4章から成っています。しかも各章にすこぶる印象的な名前がついているため独立した物語を集めた短編集かな?と一瞬思いましたが、読んでみると違いました。

主人公は女子中学生「瑠璃」。夏休みを過ごすため祖母の暮らす田舎町にやってきて経験する不思議な体験を綴ったもので、様々な伏線を経て語られるのは、瑠璃を初めとする登場人物それそれが、それぞれの事情と心の傷を抱え、悲しい過去を引きずりながら生きてきたと言う事。そしてその事実が「本」にまつわるエピソードを通して明らかになり、「魔女」とも思える登場人物の女性によるルリユールの技や、瑠璃の純真な心根、多数の登場人物それぞれの関わりを通してその傷が癒やされていくというようなあらすじです。

親子や姉妹間の出生の秘密、生き方にかかわる行き違いや悲しい過去が、実はそれぞれの思いやりや配慮の結果だった・・・不器用な生き方しかできなっかたけれど、それぞれのやり方で優しさの記憶が残されていた・・・と言う様な・・・。一言で言えばファンタジー、特に後半には不思議な異次元体験も描かれますが、夢見るようなそれではなく、あえて言えばとても現代的でシリアスな面もあるファンタジーでしょうか・・・。

書名にふさわしく全体の装丁も丁寧です。ちょっとしたカットやページ毎の役割に応じた字体の選択もされており、あえて言えばカバーがちょっと地味かと思いますが、本文のフォントや印字も含めてリアル本の魅力に溢れています。電子書籍が広がりつつある今の時代に、出版社の意気込みが感じられますね。

あとがきによれば、著者の今年の夏はこの本にかかりきりだったらしく、物語中の季節同様に暑い夏を過ごされたようです。それにふさわしい作品になっていると思います。

贈り物にしたり、手元に置きたい一冊です。

そうそう・・・村山早紀と言えば黄金旋律の続刊・・・いまだ出ていませんが・・・待っています・・・。(汗)





2012.01.29 Sunday

三上 延「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」

昨年最も話題になった本の内の一冊でしょうか?新聞広告を見て読んでみようと思ったのですが、文庫本とは思いませんでした。(笑)

『鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間 とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃 やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書 と秘密”の物語。 』
(〜amazon)

繊細なイメージの表紙でほとんど内容は分ると言う感触。読んでみた印象も同様でさほどダイナミックな展開はなく、ちょっと乱雑な印象もありますがしっとりとした一時が過ごせました。「事件手帳」と言う程には「推理物」として凄い面はありませんが、結末では過去の人々の切ない恋模様が明らかになるとともに、それが「今」にも繋がっているという予想外の真実が明らかになって人の絆について考えさせてくれます。

メディアワークス文庫とは思えない「真面目さ」と、らしい「奇想天外」さのバランスが面白い作品かな?

2011.12.17 Saturday

ラルフ・イーザウ 「緋色の楽譜 上・下」

ラルフ・イーザウ
東京創元社
¥ 2,100
(2011-10-28)

酒寄 進一 訳

緋色と言えば・・・コナン・ドイルの「・・・研究」でしたっけ?あれも面白いけど、「銀の感覚」に続く本格サスペンスである、ラルフ・イーザウの新作も凄い!!上・下2巻、計600ページを超える長編です!

『百二十四年の眠りからさめたフランツ・リストの自筆の楽譜。演奏されたその曲を聴いた若き美貌の天才ピアニスト、サラ・ダルビーは光輝くシンボルが目の前 に浮かぶのを見た。それは、サラが母から譲り受けたペンダントに刻まれているものと寸分違わぬモノグラム。そのモノグラムが、続いて現れた一篇の詩が、サ ラを嵐のただ中に投げ込んだ。何者かがホテルの部屋を荒らしてリストの楽譜を奪い、サラの命を執拗に狙う。謎を解く鍵はサラが見たリストの詩のなかに。ミ ヒャエル・エンデに続く現代ドイツ文学の旗手が贈る、時空を超えた破天荒で壮大なミステリ』
(〜amazon)

Franz Liszt(1811年〜1886年)は、ハンガリー生まれではあるがハンガリー語はしゃべれず、祖国を愛しながらも、言葉と活躍した地域の関係から言うとほとんどドイツ語〜フランス語圏の人だったらしい。ワーグナーの妻コジマの父であり、ピアノの魔術師、6本指を持つ男・・・様々な逸話を生んだ超絶的な演奏はクラシック音楽に革新をもたらしたという・・・偉大な芸術家にして文字通り歴史上の「巨人」です。

早熟の天才らしく・・・

『1827年には父アーダムが死去し、僅か15歳にしてピアノ教師として家計を支えた。教え子であったカロリーヌ・ドゥ・サン=クリック伯爵令嬢との恋愛が、身分違いを理由に破局となる。生涯に渡るカトリック信仰も深め、思想的にはサン=シモン主義、後にはェリシテ・ドゥ・ラムネーの自由主義的カトリシズムへと接近していった』
(〜wikipedia)

何てことも伝わっている・・・。(汗)

訳者あとがきによると、1956年生まれの作者ラルフ・イーザウは日常的にホームコンサートを楽しむほど音楽を愛好し、ドイツ人にとっては「我らが偉人」であるリストの伝記多数や600点を超える資料を読み込んだ上で書き上げたのがこの作品。

リストの波乱万丈で実に人間的な一生に、フリーメイソンを初めとした「組織」の存在や、自由と平和を求める戦いを絡め、ヨーロッパ中に実在するリストの「痕跡」も取りあげて、まるで万華鏡のような変化に富んだ物語が展開されます。

主人公はリストの末裔かと噂される天才女流ピアニストのサラ。音楽を聴くことで視覚的なイメージを認識する異能を持ち、発掘されたリストの音楽に込められたメッセージを知って衝撃を受ける。その直後から、サラは何者かに追われるようになり、リストの足跡を辿りながら、自らの出生の秘密とリストの楽譜に込められたとメッセージの意味を探るためヨーロッパ中を巡る逃避行を繰り広げる事となる・・・。

「銀の感覚」も異能者が登場しましたが、今回も「共感覚」という不思議な能力が取りあげられています。リストの残した「音の力」によって人間を操作し、世界を思いのままするという野望をもつ組織がサラを追い、度重なる危機を乗り越えたサラが遂に知った「音の力」の秘密とは?!と言うのが大まかなストーリー。宗教がらみの部分も多く、ちょっと暗く重厚な雰囲気もあります。

サブリミナル効果と言うのが知られていますが、この作品では、さらに積極的に「音」を悪用する「組織」と主人公サラの「戦い」が描かれていきます。基本的にはサラ視点の展開であるため、特に前半では、登場する様々な人物について敵か味方かが判然とせずに実際問題かなりストレスが溜まりますね〜。(汗)

その点、後半はメリハリの利いた展開で、クライマックスまで一気になだれ込んで行き目が離せません!孤軍奮闘のサラも力強い助けを得ますが、前半でさり気なく登場していた人物が後半で意外な働きをしたり、文字通り「驚愕の真相」が明らかになったりで作者の緻密な構成力には驚かされます!!

結末部分では愛する子供(創作か「身分違いの恋」の結果かは不明)のために心を砕いたリストの姿や、その逆に自分の野望のために家族を利用する男の末路も描かれていて、単なるサスペンスに終わらない、人間性を重視したストーリーでもあります。

作中ではリストの作品の演奏場面やゆかりの場所、エピソードなども登場しますが、実在するもの、あるいは史実に基づいた記述が多いらしく、労作と言うにふさわしい風格さえ感じさせます。

問題は・・・クラシックを聴かない人にとってはどうなのか???ということですが、私も大して知りませんし、メロディーを知らないと理解不能という場面もありませんから大丈夫でしょう。雰囲気だけでも知っていれば尚よろしいかと思いますが・・・。(笑)

音楽によって人を操る・・・荒唐無稽な話ですが、「操る」の中身が「感動によって人を変える」という事であれば、これは実在する「音の力」ですね。世界中にそのまま伝わるという意味でも実に強力な「力」ですが、今年生誕200年を迎えたフランツ・リストを初めとする古今の芸術家たちの「理想」を、21世紀に生きるラルフ・イーザウがサスペンス小説の形で示したという、画期的野心作とも思えるお話かな?

長い冬の夜・・・ジックリと読むにふさわしい小説です。

2011.12.15 Thursday

ぼくらの昆虫採集

「バカの壁」で著名な養老孟司、NPO日本」アンリファーブル会理事長 奥本大三朗 、生物学者池田晴彦の3氏が監修という300ページを超えるガイドブックです。

「捕る」「標本を作る」「見る」の各々について、「実践編」「基本編」「道具篇」の3部に分けて詳細な紹介がされている。捕虫網から電子顕微鏡まで、各氏の蘊蓄たっぷりの自慢話(笑)やアドバイス、楽しいエッセーもいっぱいで、ガイドブックとしても読み物としても、頼れる資料集としても使えるとってもお得な本と言えます。

昆虫に興味が無くても、単なる暇つぶしにもなりますし、子供や孫に良いところを見せるためにも非常に有益な武器にもなります!!

50ページにわたる巻末の資料集は、博物館や公園、図鑑のリスト、希少種や保護地区の地図などもあって有益。

ちょっと高いけど手元に置いて折に触れて目を通すだけでも楽しめる本です。

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